2012 Fiscal Year Research-status Report
資本支援プログラム―歴史的農業構築物の保全と企業的支援の日英比較研究
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23780231
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 久子 九州大学, 国際教育センター, 講師 (60597277)
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Keywords | イングランド / 英国 / サウスダウンズ国立公園 / 農文化遺産 / 環境サービス / 歴史的農業構築物 / 農業環境政策 / 地域経済振興 |
Research Abstract |
平成24年度は、英国の歴史的農業構築物保全に関与する諸制度の整理を行った。結果、イングランドの場合、諸制度により歴史的農業構築物保全のための公的支援が企業支援よりも確立されていることが明確となった。よって、調査対象を公的機関や非営利団体に絞込み、研究課題解明のためのより詳細な調査を継続して行った。 まず、英国イングランドの農業環境政策をである環境管理助成制度(Environmental Stewardship、以下ES制度)の中でも、特に、上級レベル事業(HLS)の中に組み込まれている資本支援について、査定の手続きや査定基準を伝統的農業構築物であるポンプハウスの改修の事例を取上げ、審査過程を詳細に調査した。 次に、HLSに参加するには、伝統的な農村景観、野性生物の生息環境、農業遺産として価値の高い重要対象地域を持つことが採択条件となるため、コッツウォルズといった特別自然美観地域や国立公園内の農地、そしてナショナルトラストといった非営利団体が所有する農地を調査した。文化的遺産である農村部の風景の一部である歴史的農業構築物保全へのこれらの公的機関や非営利団体の責任(権利)の所在や、管理計画を明確にし、具体的な活動を調査した。 具体的には、農地や放牧地に沿って存在する遊歩道の整備や、農地に存在する歴史的農業構築物の改修支援、若者を対象とした石垣積みの技術伝承支援等の対象事例を整理した。その中でも一般市民が親しんでいる遊歩道は、一般の市民と農地をつなげる大切な役割を担っており、農文化遺産のもたらす環境サービスを提供している。特に、レクリエーション機能の強化、地域経済の振興、自然保護や農文化遺産保全と持続可能な農業生産の共存への人々への啓発・教育活動等多様な目的を担う国立公園の内外における、遊歩道を楽しむ人々の持つ、農文化遺産のもたらす環境サービスの価値評価を行う準備調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、英国イングランドの農業環境政策をである環境管理助成制度(Environmental Stewardship、以下ES制度)の中でも、特に、より専門的で高額な取組を対象とし、多様なオプションによって個別に取組内容を設計する制度の2段目にあたる上級レベル事業(HLS)の中に組み込まれている資本支援について、査定の手続きや査定基準を伝統的農業構築物であるポンプハウスの改修の事例を取上げ、審査過程を詳細に調査し、それを報告書としてまとめた。 初年度よりの研究計画どおり農文化遺産のもたらす環境サービスの価値を評価するため遊歩道を楽しむ一般市民を対象にアンケート調査を行う。当初は、H24年度に行う予定であったアンケート調査は、海外でのアンケート調査であることから現地での協力体制を整えるためにH25年度に繰り越した。そのため、予算も繰り越すこととなった。しかしながら、お陰で自治体と国立公園管理局両方のアンケート調査への協力体制を整えることが出来た。協力体制を整えるための準備は初年度の研究計画では想定しておらず、今後の参考としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度よりの研究計画どおり農文化遺産のもたらす環境サービスの価値を評価するため遊歩道を楽しむ一般市民を対象にアンケート調査を行う。国立公園は複数の自治体に位置しており、これらの自治体は遊歩道を活用した歩くプログラムを提供している。今回は2つの自治体に2月の準備調査の段階でアンケート調査の協力依頼をし、了承済みである。6月に本調査を行い、7月と8月でアンケートを回収し、紙媒体とインターネットでのアンケートの両方からデータを取りまとめ、9月から11月にデータ分析を行う。そして分析結果をもとに12月に価値評価部分をまとめ、1月中には最終報告書をまとめる予定である。2月には英語の論文にして国際ジャーナルに投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度における研究成果を踏まえ、研究計画どおり農文化遺産のもたらす環境サービスの価値を評価するため遊歩道を楽しむ一般市民を対象にアンケート調査を行う。また、H24年度に行う予定であったアンケート調査は、海外でのアンケート調査であることから現地での協力体制を整えるためにH25年度に繰り越した。そのため、予算も繰り越すこととなった。しかしながら、お陰で自治体と国立公園管理局両方のアンケート調査への協力体制を整えることが出来た。協力体制を整えるための準備は初年度の研究計画では想定しておらず、今後の参考としたい。繰り越した予算で、カートリッジ代などの印刷費と郵送費などを計上する。また、データインプットなどデータの整理・分析等のための人件費とする。そして、調査の成果を国内外の学会発表や論文投稿といった形で出していくための学会参加費や論文の英文校正などに用いる。
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Research Products
(6 results)