2011 Fiscal Year Research-status Report
犬のアレルギー性皮膚炎における皮膚前駆細胞の同定と病態解析への応用
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23780330
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
川原井 晋平 麻布大学, 大学病院, 助教 (20533079)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 皮膚前駆細胞 / CD34 / アレルギー性皮膚炎 / 犬 |
Research Abstract |
皮膚再生に関わる皮膚前駆細胞のアレルギー性皮膚炎(AD)における病態と治療応用への可能性を明らかにするため、本研究は、犬の外科的創傷皮膚組織とAD病変部組織における皮膚前駆細胞の同定、犬骨髄由来皮膚前駆細胞の初代培養とアレルギー性炎症に対するin vitro解析系の構築を目的とする。 本年度は、犬の外科的創傷皮膚組織と、ADおよびAD以外と診断された犬の皮膚病変部組織を収集し、パラフィン包埋組織における抗CD34免疫染色と犬CD34陽性造血幹細胞の採取を実施した。抗CD34免疫染色では、陽性対照である血管内皮細胞の染色を確認した。皮膚生検1日後の皮膚組織は、独立した紡錘形から円形なCD34陽性細胞が創傷部位の近傍の表皮下、真皮浅層に、正常皮膚組織と比較して数多く存在し、AD病変部組織にも認められた。犬CD34陽性造血幹細胞の採取のため、麻酔下の犬に骨髄穿刺を行って髄液を採取し、密度勾配遠心分離法によって単核球を分離した。採取した単核球から抗犬CD34抗体を用いて磁気カラム法によって分離を行い、フローサイトメトリーにより犬CD34陽性造血幹細胞が採取可能であることを確認した。 犬の創傷皮膚およびAD病変部組織においてCD34陽性細胞が同定されたことから、ADの病態に皮膚前駆細胞が関与する可能性が示唆された。分離できた犬CD34陽性造血幹細胞は皮膚前駆細胞のin vitro解析系の構築に有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犬のアレルギー性皮膚炎病変部皮膚組織の収集は、目標である10症例中、今年度5症例を実施することができた。これまでに収集した組織を合わせると10症例は既に達成できている。 今年度、犬のパラフィン包埋組織を用いた抗CD34抗体の免疫染色を確立でき、皮膚前駆細胞(CD34陽性細胞)の局在解析が可能となった。ふたつの抗CD34抗体(クローン1H6、2E9)では、パラフィン包埋組織の免疫染色が成功しなかったことと、通常の抗原賦活化法では組織への障害が強く条件の検討が必要であったことから、手法の確立に時間を要し、p63陽性細胞の局在解析まで今年度中に実施することはできなかった。しかし、今年度、組織障害の少ない効率的な免疫染色の手法を確立することができ、次年度までにp63陽性細胞の解析を実施できると考えている。 次年度に渡って計画をしていた犬CD34陽性造血幹細胞の分離をフローサイトメトリー法を用いて確認することができ、今年度中に実施することができた。 上記のことから、犬のアレルギー性皮膚炎病変部皮膚組織の収集が済んでいること、皮膚前駆細胞の局在解析の手法が確立できたこと、犬CD34陽性造血幹細胞の分離に着手できたことから、おおむね順調に研究の目的が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に継続して犬の外科的創傷皮膚組織と、ADおよびAD以外と診断された犬の皮膚病変部組織を収集する。犬の外科的創傷皮膚組織は、皮膚生検1日後から3日間隔、2週間後まで採材する。収集した皮膚組織において、本年度に確立した抗CD34免疫染色を実施し、創傷治癒過程およびADにおけるCD34陽性細胞の動態を解析する。同様に造血幹細胞マーカーであるc-kitと皮膚前駆細胞マーカーであるp63も実施する。創傷治癒にある皮膚にアレルギー性炎症に関わることが知られるIL-4、IL-13、TSLPを皮内投与し、皮膚前駆細胞(CD34、c-kit、p63陽性細胞)の動態への影響を解析する。 本年度に確立した方法を用いて犬CD34陽性造血幹細胞を採取し、皮膚前駆細胞への分化誘導を次年度に実施する。具体的には純度の高いCD34陽性造血幹細胞を、増殖因子下で培養し、皮膚基底膜細胞マーカーであるケラチン15の発現を指標に表皮細胞の初代培養を行う。初代培養を樹立したのち、IL-4、IL-13、TSLPの初代培養皮膚前駆細胞への影響を蛋白リン酸化を指標にImmunoblot法を用いて解析する。ケラチン15の発現が計画通りに認められなかった場合、ケラチン15以外の皮膚前駆細胞マーカーについて解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
犬の外科的創傷皮膚組織と、ADおよびAD以外と診断された犬の皮膚病変部組織を収集する消耗品費に50千円使用する。 CD34、c-kit、p63に対する抗体試薬代と免疫染色の消耗品費に200千円使用する。 CD34陽性造血幹細胞の採取のための動物実験(麻酔・骨髄穿刺等)および磁気カラム分離に必要な消耗品費(抗体・カラム代等)に300千円使用する。 皮膚前駆細胞の初代培養のための試薬(培地・増殖因子等)に400千円使用する。 外部発表の交通旅費に100千円、論文投稿のための校閲費に50千円使用する。
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Research Products
(5 results)