2011 Fiscal Year Research-status Report
食材性昆虫に共生する真核単細胞微生物の木質分解遺伝子の進化と生態
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23780336
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
野田 悟子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80342830)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 木質分解酵素遺伝 / 共生原生生物 / シロアリ |
Research Abstract |
本研究課題では、シロアリ共生原生生物がどのような基質に作用する木質分解酵素遺伝子のセットを有しているのか、並びにそれら木質分解酵素遺伝子の進化的起源を明らかにすることを目的としている。 保有する遺伝子から木質分解の効率性を考察するため、鹿児島県に生息するオオシロアリ腸内の原生生物が発現している酵素遺伝子を解析した。まずEST解析で取得した配列とカビ等の他生物由来の遺伝子配列を比較考慮してGHF7,45のセルラーゼ、GHF10のキシラナーゼ遺伝子増幅用のPCRプライマーを新たに設計した。このプライマーを使用し、各原生生物細胞が発現する遺伝子を解析した。1匹のシロアリ腸内には複数種類の原生生物が混在しているため、顕微鏡下で形態を見分け細胞内に木片が取り込まれている大型のEucomonympha属、Trichonympha属を1細胞づつ分取した。原生生物1細胞づつを鋳型として、RT-PCRを行ったところ、全てのサンプルからPCR増幅が確認できた。それぞれの増幅産物をクローニング後、各サンプルからコロニーを釣菌して塩基配列を決定したところ、GHF7,45,10の各遺伝子は、2種の原生生物のいずれの細胞でも、1つの主要な遺伝子が発現していると推定された。また、同一の細胞からGHF7,45,10遺伝子が取得できることから、原生生物は複数の木質分解酵素遺伝子を保有しており、各細胞内でそれらが同時に発現機能していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食材性昆虫シロアリは、摂食した枯死材の主要成分であるセルロースやヘミセルロースのほぼ100%を分解・利用することが知られている。本研究では、シロアリ共生原生生物が持つ木質分解酵素遺伝子群を対象として、各共生原生生物種がどのような基質に作用する木質分解酵素遺伝子のセットを有しているのか解析し、効率的な木質分解の機構を明らかにすることを目的としている。 当初計画通り初年度は、原生生物種内に同一ファミリーのGH遺伝子が何種類存在しているのかを明らかにすることを試みた。鹿児島県に生息するオオシロアリ腸内の大型原生生物Eucomonympha属、Trichonympha属の1細胞から、等温ゲノム増幅を行い、whole genome DNAを調整した。このDNAを鋳型として、GHF7遺伝子をPCRで増幅してクローニングして配列を決定した。現在詳細な配列解析を進めている。 またRT-PCRにより、GHF7,45,10の各遺伝子を取得して解析を行った。原生生物1細胞を鋳型としてcDNAを合成し、PCRによりGHF7,45,10の各遺伝子を増幅したところ、産物が確認された。このことから、原生生物は複数の木質分解酵素遺伝子を保有しており、各細胞内でそれらが同時に発現機能していることを明らかにした。当初予定した研究計画に沿って概ね順調に研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、宿主コロニーが異なる同種の原生生物が、同じ遺伝子セットを有しているのか確認する。複数の異なるコロニーの宿主腸内からそれぞれ原生生物細胞を分取し、各細胞から遺伝子をクローニングして解析する。次いで、いくつかのファミリーを選定し、原生生物細胞から遺伝子をクローニングする。その後、得られた結果から、細胞ごとの配列多様性を集団遺伝学的な計算手法を用いて検定する。 系統学的に近縁のシロアリ種には近縁の原生生物種が生息しており、宿主シロアリと共進化関係にあることを申請者らは報告している。そこで、オオシロアリ腸内の原生生物が共通して保有するファミリーのGH遺伝子を、別種のシロアリに共生する近縁種の原生生物からも取得し、SSU rRNA遺伝子等の系統マーカーに基づいた原生生物の系統とGH遺伝子の系統関係が一致するか系統進化学的解析を行う。解析には推定アミノ酸配列を用いて、最尤法やBayes法等の複数の計算手法を用い、樹形の一致を統計学的に検定するプログラムも使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は新たに必要になる備品等はないため、研究費は主に試薬消耗品に使用する。,多サンプル数を処理する必要があるため、PCR用の酵素等の遺伝子解析用試薬や、マイクロチップやチューブ等のディスポーザブル製品の購入を予定している。
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Research Products
(3 results)