2011 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン化による高次クロマチン構造形成機構の解明
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23780351
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
白井 温子 独立行政法人理化学研究所, クロマチン動態研究チーム, 基礎科学特別研究員 (60525575)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン / ユビキチン化 / 分裂酵母 / 非ヒストンタンパク質 |
Research Abstract |
ヘテロクロマチンは発生や疾患におけるエピジェネティックな遺伝子発現抑制など、様々な生命現象に重要な役割を果たす最も代表的な高次クロマチン構造であるが、その形成の仕組みの詳細は未だに不明な点が多い。このヘテロクロマチン形成にユビキチン化が関与することを示唆する知見が2004年に発表されたが、ユビキチン化修飾をうけるヘテロクロマチン因子は現在に至るまで不明なままである。さらに、最近ではユビキチン化修飾は関係ないのではないかという議論までが起こっている。本研究では、申請者が見出したユビキチン化修飾を受けるヘテロクロマチン関連因子に注目し、これらのタンパク質のユビキチン化部位を置換した変異株を作製してヘテロクロマチン形成への影響を検討することで、ヘテロクロマチン形成におけるユビキチン化が果たす役割の解明を目的としている。本年度は理化学研究所吉田化学遺伝学研究室の未発表の分裂酵母全タンパク質が受ける翻訳後修飾のデータと、先行する研究より構築した迅速にユビキチン化タンパク質を同定するGST-Ub法から見出した複数タンパク質のユビキチン化が本当にユビキチン修飾を受けるか、変性条件下で各タンパク質を精製し、結合タンパク質を除去した後、抗GST抗体で検出を試みることで検証した。さらに、同定したタンパク質のE3ユビキチンリガーゼがCul4-Rik1-Clr4複合体であるかどうかを検証するため、rik1, clr4各破壊株を作製し、各タンパク質のユビキチン化レベルが変動するかどうかを検討し、候補と考えられるタンパク質を見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたCul4ユビキチンリガーゼの構成因子をコードするrik1やclr4を破壊した約200株の作製と各タンパク質のユビキチン化レベルの変動を検出するスクリーニングを終え、Cul4-Rik1の基質と考えられるタンパク質を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに同定したCul4によってユビキチン化されるタンパク質がどのように高次クロマチン構造形成に関与しているかを解明する。まず、in vitroのユビキチン化アッセイを行い、直接Cul4-Rik1複合体によってユビキチン化されていることを証明する。その後、実際に同定したタンパク質のユビキチン化が、ヘテロクロマチン構造形成に関わる可能性を調べるため、同定した各タンパク質のユビキチン化部位を置換した株を作製し、ヘテロクロマチン領域であるセントロメアや接合型遺伝子座にマーカー遺伝子を挿入した株と掛け合わせを行い、その発現抑制(サイレンシング)が解除されるかどうかを検討する。この実験によりヘテロクロマチン構造形成に関与していることが示唆された場合、各変異株を用いて、クロマチン免疫沈降法(ChIP)により各タンパク質のヘテロクロマチン局在やヒストンH3 K9 のメチル化の有無を確認することで、ユビキチン化がヘテロクロマチンへのターゲティングに関与しているかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在注目している標的タンパク質はポリユビキチン化されることから、SDS-PAGE で幅広い範囲の分子量をカバーする必要性や検出する抗体が必要になるため、次年度の研究費を使用してグラジエントゲルおよび抗体を購入する予定である。さらに、ポリユビキチン化の検出感度を上げるために、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブを購入する予定であり、この薬剤は抗がん剤として認可されていることもあり、高価である。しかしながら、分裂酵母ではボルテゾミブ以外のMG132など比較的安価なプロテアソーム阻害剤は作用しないため、この薬剤を購入する必要がある。また、ChIPにより各タンパク質のヘテロクロマチン局在やヒストンH3 K9のメチル化の有無を確認するため、リアルタイムPCRを用いて検出する予定である。そのための試薬の購入を次年度の研究費を使用して行う予定である。
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Research Products
(2 results)