2011 Fiscal Year Research-status Report
サイズ選択と光反応を利用した新規血中循環癌細胞回収チップの開発
Project/Area Number |
23790023
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
有安 真也 東京理科大学, 総合研究機構, ポストドクトラル研究員 (50586998)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光分解反応 / 血中循環癌細胞 / シリコン基板 / 抗体 / キノリノール |
Research Abstract |
今年度は当初の計画通り、高効率、長波長光で光切断可能な光切断部の合成に着手した。光分解性8-quinolinyl sulfonateに光増感剤であるthioxanthoneを共存させ、光分解効率の向上を検討したが、分解効率の顕著な上昇は見られなかった。一方、8-quinolinyl sulfonateの誘導体化を行い、7位に重元素である臭素、ヨウ素を導入することで、約2倍の分解率の向上が見られた。また、7位にニトロ基を導入した誘導体では、約30 nmほど、長波長光でも十分な光分解能を示し、また、一般的に用いられる蛍光灯によっても分解可能であることを見出した。この結果をまとめ、投稿論文にて公表した。また、シリコン基板上に光分解性リンカーを介して、モデル抗体を修飾した新規光応答性抗体修飾基板の作成を行った。修飾反応の進行を赤外分光法と原子間力顕微鏡にて評価を行った。また、当初、固体表面での光分解反応が通常の溶液中での光分解と同様に進行するか危惧されたが、二次抗体を用いた酵素反応と高速原子間力顕微鏡により、リンカーの光分解に伴う、基板表面上の抗体の脱離を確認され、固体表面上での光分解反応が問題なく進行することを明らかにした。これらと並行し、サイズ選択マイクロ流路における細胞吸着の抑制を行うために、ポリエチレングリコールの誘導体を合成した。この誘導体はモデル細胞での吸着力の評価において、優れた吸着抑制効果を示した。現在、当初の計画よりも早く、モデル細胞を用いた評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた (1) 高効率、長波長光で分解可能な切断部の合成、(2) シリコン基板上での光切断リンカーの性能評価、(3) サイズ選択マイクロ流路の吸着抑制のための化学修飾、のいずれの計画も当初の目標を達成し、さらに (1) に関しては、結果を投稿論文にて公表した。さらに現在、次年度の計画であった新規光応答性抗体修飾シリコン基板の構築に着手しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、計画通り、光分解性リンカーを用いて、モデル抗体をシリコン基板に固定した新規光応答性抗体修飾シリコン基板の構築行う。この際、抗体の修飾率を最適化するため、リンカーの修飾条件、ブロッキング方法等の検討を行う。また、これと平行し、平成23年度に見出した蛍光灯で切断可能な光分解ユニットを骨格とした新規光分解性リンカーの設計と合成を行い、光分解特性等の分析を行う。さらにこのリンカーを用いた光応答性抗体修飾シリコン基板を構築し、平成23年度に確立した評価法で性能評価を行う。その後、モデル抗体に対する抗原を細胞表面に発現させたモデル細胞を用い、構築した光応答性抗体修飾シリコン基板の実用性評価を行う予定である。具体的には、モデル細胞と抗体修飾基板の付着力を見積もる。次に、複数の細胞混合物の中から、モデル細胞を選択的に捕捉可能か検討する。最後に、基板表面の抗体で捕捉したモデル細胞を光照射によって回収可能かを検討する。最後に、モデル抗体から血中循環癌細胞に対する抗体へと変更を行い、嘆願マウス血液から血中循環癌細胞を捕捉、回収可能かを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の成果により、作成したシリコン基板の評価法がほぼ確立された。平成24年度は、蛍光灯で切断可能な新規光分解性リンカーの設計と合成を行う必要があるため、主に合成試薬等に研究費を使用する予定である。また、修飾する抗体密度を制御した光応答性シリコン基板を多数作成する必要があるため、高速原子間力顕微鏡に使用するカンチレバー等の消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)