2012 Fiscal Year Annual Research Report
サイズ選択と光反応を利用した新規血中循環癌細胞回収チップの開発
Project/Area Number |
23790023
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
有安 真也 東京理科大学, 総合研究機構, 研究員 (50586998)
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Keywords | 光分解反応 / 血中循環癌細胞 / シリコン基板 / 抗体 / キノリノール |
Research Abstract |
今年度は当初の計画通り、前年度に開発した新規光応答性抗体修飾シリコン基板上の選択的細胞捕捉能を評価するために、基板をマイクロ流路に組み込んだ専用のマイクロデバイスの開発を行った。本デバイスにモデル抗原を細胞膜に強制発現させたモデル細胞を正常マウス血液に混合して導入したところ、モデル細胞のみを選択的にシリコン基板上に捕捉することに成功した。捕捉した細胞に対し、流速を徐々に上げて、力学的に基板上から細胞を引きはがし、その際の流速から、細胞吸着力を算出したところ、抗原-抗体反応による特異的な細胞との吸着力は、非特異的な細胞吸着よりも約10倍の吸着力を示した。また、目的細胞を基板上に捕捉後、365nmの光照射を行ったところ、目的細胞の吸着力は約30%にまで減少し、低流速で容易に回収可能となった。さらに、回収した細胞は、実験前とほぼ同等の増殖率を保って、再培養可能であり、新規光応答性抗体修飾シリコン基板が目的細胞の選択的捕捉と回収に有用であることを実証した。 本研究期間全体を通じて得られた成果として、光分解性有機化合物の設計と合成を行い、光分解の高効率化に成功した(有安ら、Chem. Pharm. Bull., 2011)。さらに、この成果を基に設計した光分解性リンカーを用いて、新規光応答性抗体修飾シリコン基板の開発を行った。本基板を組み込んだマイクロデバイスは、基板上の抗体による抗原-抗体反応により、細胞混合液から目的細胞のみを選択的に捕捉し、その後、光照射によって、目的細胞を容易に回収可能であることを実証した。本成果は、投稿論文(有安ら、Langmuir, 2012)として公表した。本研究で開発した細胞分離技術は、光照射という制御しやすい外部刺激で応答する新たな細胞分離法として有用であり、疾病に関与する細胞の単離を通じて、医療分野への貢献が期待できる。
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Research Products
(8 results)