2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質過酸化反応における脂質ラジカルと生体内分子の反応産物の検討
Project/Area Number |
23790053
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高城 徳子 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (80424068)
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Keywords | 脂質過酸化 |
Research Abstract |
脂質過酸化反応の開始段階において酵素が関与している場合と、酵素ではなくラジカルが引き金となって反応が開始している場合で、反応産物あるいは反応中間体の構造に違いがあるか否か検討を行っている。酵素反応の場合は大豆由来のリポキシゲナーゼを、ラジカル反応の場合はラジカル発生剤AMVNを用いて検討を行った。 脂質(リノール酸)とアミノ酸の混合溶液を酵素あるいはラジカルで酸化し、HPLCにて分析を行った。数種類のアミノ酸で反応させHPLCに供したところ、酵素的反応とラジカル反応で検出されたピークの保持時間に違いは認められなかった。生体内を考慮した場合に、脂質過酸化物あるいは反応中間体の反応対象物としてタンパク質を考えアミノ酸との反応を検討したが、アミノ酸との反応では酵素反応と化学的反応において脂質過酸化物(あるいは中間体)-アミノ酸反応物のHPLC分析では相違が認められなかった。 そこで、アミノ酸との反応ではなく、中間体のカルボニル化合物での検討を行うこととした。アルデヒドを検出する目的で、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)との反応を行った。DNPHを酵素とともに同時に添加し、アルデヒドが産生されると同時にDNPHと反応させた場合と、過酸化反応後にDNPHを添加して反応を行った場合では、両者に相違は認められなかったので、過酸化反応後にDNPHを添加することとした。酵素反応とラジカル反応による脂質過酸化過程で産生されるDNPH反応物質をHPLCで検出したところ、ピーク保持時間に明らかな相違は認められないが、ピーク面積の比が異なっており、反応で産生されるアルデヒド(カルボニル化合物)の構造に違いはないが、反応量の比が異なっている可能性が示唆された。しかし、HPLCだけではどのような構造のものが産生され、酵素反応ではどのような構造のものが優位に産生されているかは不明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
酵素反応と化学的反応(ラジカルによる脂質過酸化開始)により脂質過酸化で産生され異なる反応産物を検出し、細胞レベル、動物レベルでのも検出できれば、病態時に脂質過酸化がラジカルで生じているのか酵素反応によるものなのか判別可能であると考えていたが、現状、酵素反応および化学的反応での反応産物にHPLC分析の結果、相違が認められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
アルデヒド(ケトンを含むカルボニル化合物)の検出試薬として2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを使用しているが、ダンシルヒドラジンでの検出も試みる予定である。また、リノール酸との反応しか試みていないので、他のリノレン酸やアラキドン酸での反応でも同様な結果が得られるのか否か検討してみると同時に、酵素が大豆リポキシゲナーゼを用いているが、他の酵素、網状赤血球由来のリポキシゲナーゼや5-リポキシゲナーゼでも反応を行ってみる。また、結果次第では、単一の脂質ではなく、数種類の脂質を混合したり、リン脂質を用いたリポソームでの検討を試みることも必要である。 また、反応産物の情報を得るために、質量分析装置などを使用して、DNPH反応産物の構造について検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HPLC用溶媒としてアセトニトリル、メタノール等、HPLC用カラム、HPLC用の消耗品およびリポキシゲナーゼ、リン脂質などの試薬を購入する。
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