2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗生物質に対する耐性メカニズムの分子構造論的研究と創薬への応用
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23790054
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 助教 (10546576)
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 抗生物質 / リボソーム / X線結晶解析 / ドラッグデザイン |
Research Abstract |
本研究は、アミノグリコシド系抗生物質に対する細菌の薬剤耐性獲得メカニズムを分子レベルで明らかにし、耐性菌や感染性原虫にも効く新規薬剤を設計・開発することを目的とする。 アミノグリコシドは細菌リボソームの活性部位に存在するRNA分子スイッチに作用することで高い殺菌効果を示す。これに対して細菌は、分子スイッチをわずか1塩基変異させることで薬剤耐性を獲得する。薬剤耐性菌が持つ変異型分子スイッチのうち、特にA1408GとA1408methyl-Aの2種類が臨床現場で問題となっている。また、リーシュマニア症などを引き起こす感染性原虫は元来A1408G型とよく似た分子スイッチをもつので、多くのアミノグリコシドに対して耐性を示す。 平成23年度には、A1408G変異型スイッチ単独および抗生物質G418との複合体のX線構造解析に成功した。これによって、薬剤耐性菌と感染性原虫にも効く新規薬剤の設計・開発の基盤となる構造情報を得ることができた。平成24年度には、この構造情報を利用して新規薬剤のStructure-Based Designと化学合成を行い、実際にこの薬剤がA1408G変異型スイッチに強く結合することで抗原虫作用を示すことを確認した。 平成25年度(最終年度)には、もう1つのターゲットであるA1408methyl-A変異型スイッチのX線構造解析にも成功し、ある種の抗生物質がこのスイッチに強く結合することを明らかにした。さらに、致死型スイッチA1408CおよびA1408Uの構造解析にも成功し、細菌がスイッチの1408番目をプリン塩基Aから同じくプリン塩基であるGまたは1-methyl-Aに変異させることでスイッチの働きを正常に保ったまま抗生物質の作用を免れることを明らかにした。 以上、本研究によって薬剤耐性問題の克服という課題を基礎・応用両面で達成することができた。
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Research Products
(6 results)