2011 Fiscal Year Research-status Report
コンドロイチン硫酸合成不全による骨疾患の発症機序の解明
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23790066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水本 秀二 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 博士研究員 (40443973)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / デルマタン硫酸 / プロテオグリカン / 骨形成 / グリコサミノグリカン / 変形性関節症 / ドイツ / ニュージーランド |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸 (CS) は軟骨に豊富に存在し、関節では水分保持等の役割を担っている。我々は、CSの合成に関わる硫酸基転移酵素の遺伝子変異によって、脊椎・骨端異形成症が引き起こされることを見つけた。この疾患は、進行性脊柱後側湾症・関節炎・関節拘縮・関節脱臼を特徴とし、高齢者に多い変形性関節症や関節リウマチの疾患と似ている部分があるが、不明な点が多い。そこで、本研究では脊椎・骨端異形成症を関節および骨疾患のひとつのモデルとして、その発症のメカニズムを解明することにより、これらの疾患の将来的な治療法および治療薬のシーズを探求することを目的とする。今年度は、CSと結合する関節軟骨のタンパク質の同定するために、CSのアフィニティカラムを作製し、ヒトの軟骨腫細胞の培養液からタンパク質を抽出し、上記のCSカラムにかけ、質量分析によって、CS結合タンパク質である複数の候補タンパク質を見つけ、現在解析中である。 また、ドイツのグループと共同で、CSの合成に関わるグルクロン酸転移酵素(GlcAT-I)が先天性の脱臼症と心臓の弁の形成不全を示すラーセン様症候群をきたすことを発見し、Cell PressのAmerican Journal of Human Geneticsに掲載された。さらに、CS-EのリガンドとしてReceptor for Advanced Glycation End Products (RAGE)を同定し、癌の転移に関わることを発見し、Journal of Biological Chemistryに掲載された。さらに、ヒトナチュラルキラー(HNK)-1糖鎖抗原の硫酸化に関わるHNK-1 硫酸基転移酵素がCSの合成にも関与していることを見出し、Journal of Biological Chemistryに掲載された。また、国内学会発表4回、国際学会での発表を2回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、コンドロイチン硫酸と結合する関節軟骨のタンパク質をMALDI-TOF/MSによって、複数同定した。また、シグナル伝達に関わるタンパク質のwestern blottingの条件検討を行っている最中である。 さらに、ドイツのグループと共同で、コンドロイチン硫酸の合成に関わるグルクロン酸転移酵素(GlcAT-I)が先天性の脱臼症と心臓の弁の形成不全を示すラーセン様症候群をきたすことを発見し、世界的に有名なCell PressのAmerican Journal of Human Geneticsに掲載された。さらに、コンドロイチン硫酸-Eのリガンドとして、炎症や老化に関わる有名なタンパク質Receptor for Advanced Glycation End Products (RAGE)を同定し、癌の転移に深く関与していることを初めて発見し、アメリカの生化学・分子生化学会の学会誌で国際的に有名なJournal of Biological Chemistryに掲載された。さらに、ヒトナチュラルキラー(HNK)-1糖鎖抗原の硫酸化に関わるHNK-1 硫酸基転移酵素がコンドロイチン硫酸の合成にも関与していることを見出し、Journal of Biological Chemistryに掲載された。また、国内学会発表4回、国際学会での発表を2回行った。以上の国際的に著名な雑誌と学会発表の実績から、当初の計画以上に進展しているといっても過言ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は引き続き、CSと結合し、骨形成に関わるタンパク質の同定を予定している。さらに、変形性関節症モデルマウスを用いて同定した標的タンパク質の炎症抑制効果を関節炎スコアによって検討する。また、ヒトの実験として変形性関節症および関節リウマチ患者のCSの定量を行うことによて、新規診断法を開発する。具体的には下記の実験を行う。1)CSと結合する関節軟骨のタンパク質の同定:CSの6-O-硫酸と特異的に結合するタンパク質を同定するために、まず6-O-硫酸構造を豊富に有するサメ軟骨由来CSをアミノセルロース樹脂に共有結合させ、アフィニティーカラムを作製する。次いで、ヒトの軟骨腫細胞の培養液もしくはマウス・ラットの脊椎軟骨からタンパク質を抽出し、上記のCSカラムに供じる。得られた結合画分について、LC-ESI-MSあるいはMALDI-TOF-MSを用いた質量分析によって、CSと結合するタンパク質を同定する。2)C6ST-1変異細胞を用いたシグナル伝達の解析:(1)で同定したCSの6-O-硫酸と特異的に結合するタンパク質について、ビアコアを用いた相互作用解析を行う。3)変形性関節症モデルマウスを用いた解析:関節炎モデルは、あくまでヒトの関節炎ではなく動物の関節炎であるので、発症機構の異なる複数のモデル動物、アジュバント関節炎、コラーゲン誘発関節炎、プリスタン誘発関節炎、MRL/lマウス自然発症関節炎の4種を用いて、上記で同定した標的タンパク質を単独もしくはCSとの混合溶液を関節炎症部位に投与し、炎症抑制効果を関節炎スコアによって検討する。4)変形性関節症および関節リウマチ患者のCSの定量:脊椎・骨端異形成症、変形性関節症および関節リウマチ患者から提供された関節の浸出液中のCS鎖の網羅的な構造解析と定量を行い、臨床症状との相関関係を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究費の使用計画として、以下に列挙する。1)消耗品(80万円):一般試薬および糖鎖や酵素等として40万円、糖鎖分析カラム10万円、細胞培養プラスチック器具10万円、実験動物(マウス)10万円、培養のためのウシ胎仔血清10万円を計上。2)旅費(40万円):本研究成果を学会等(日本生化学会年会・福岡およびInternational Symposium for Glycosyltransferase・ドイツ)で発表し、意見交換の機会を得るために多額の旅費が必要である。また、国内旅費に関して、申請者は北海道から常に飛行機を使用せねばならず、このような地理的条件のために通常よりも多額の旅費が必要である。国内旅費として10万円、海外旅費として30万円を計上。3)謝金等(20万円):専門的知識を申請者のグループへ提供していただくために、年に1~2回、先端的研究を行っている専門家を招聘して、講演していただく(10万円)。また、実験補助として10万円を計上。4)その他(20万円):研究成果投稿料5万円、動物施設・アイソトープ施設使用料5万円、学会参加費5万円、実験廃棄物処理費5万円を計上。H23年度未使用の金額「714円」が発生した理由としては、消耗品をH23年度中に納品完了したが、支払いが次年度以降になったためである。次年度に本消耗品「酢酸」(714円)の支払いに使用する。
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Research Products
(13 results)