2011 Fiscal Year Research-status Report
代謝調節因子Fgf21の脂肪組織における役割とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
23790111
|
Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小西 守周 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (00322165)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | Fgf21 / 白色脂肪組織 / インスリン感受性 / ケトン体 / ノックアウト |
Research Abstract |
Fgf(fibroblast growth factor)21は、肝臓において産生され、内分泌因子として機能し、白色脂肪組織の機能維持に重要である。糖代謝から脂質代謝への移行が起こるケトン食飼育時において、肝臓におけるFgf21の発現や血中Fgf21量が著しく増加することが明らかになった.従って、本研究ではFgf21ノックアウトマウスをケトン食により飼育し、全身の糖、脂質代謝調節におけるFgf21の生理的な意義を検討した。ケトン食で飼育したFgf21ノックアウトマウスでは、肝臓におけるケトン体産生や、中性脂肪の蓄積に異常は認められなかった。しかし、白色脂肪組織におけるLpl活性が高いことにより、血中の中性脂肪濃度が増加していた。さらに、ケトン食飼育したFgf21ノックアウトマウスでは、同条件の野生型マウスに比較してインスリン感受性が上昇していた。この原因としてインスリン負荷時のAktのリン酸化を検討したが、肝臓や筋肉では、Fgf21ノックアウトマウスでも野生型と同程度のリン酸化が認められたのに対し、白色脂肪組織において、野生型に比較して有意にリン酸化が亢進していることが明らかとなった。以上の結果より、Fgf21は低炭水化物、高脂肪の条件下において、肝臓には作用せず、一方で白色脂肪組織に作用し、Lpl活性を低下させ中性脂肪の取込みを減少させること、さらには白色脂肪組織に特異的にインスリン感受性を下げ、血糖値を維持する役割を担うことが明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本期間では、目的に沿って、ケトン食負荷時におけるFgf21について、Fgf21ノックアウトマウスの解析を行った。本期間において、Fgf21が、生理的に白色脂肪組織特異的にインスリン感受性を下げる役割とLpl活性を阻害する役割を持つことを明らかにできた。一方、Fgf21の受容体であるFgf受容体1についても、本期間において脂肪組織特異的FGF受容体1ノックアウトマウスの作成を始めることとしていた、現在は、その予定に沿って脂肪組織特異的Cre発現マウスとFgf-flox1マウスの交配を進めており、今後受容体1の欠失の確認を行う。したがって、本研究は、当初予定におおむね沿った形で順調に進行しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで24時間の絶食でも、ケトン食負荷実験でも、Fgf21ノックアウトマウスでは白色脂肪組織に表現形質が認められ、肝臓には大きな影響は認められていない。これらの結果により、Fgf21が、内分泌因子として、白色脂肪組織に直接作用する可能性が期待される。したがって、今後は脂肪組織特異的Fgf受容体1欠失マウスについて、通常食、絶食、ケトン食の3つの状況において、白色脂肪組織のインスリン感受性や脂質代謝に焦点を絞って解析を進める。また、FGF受容体1には、Fgf21以外にも結合親和性を示すFgfリガンドが存在する。Fgf21などの少数のFgfリガンドは内分泌因子として機能しうるものの、それ以外の多くのFgfリガンドは傍分泌因子として機能する。したがって、傍分泌因子として機能し、白色脂肪組織機能を調節しうるFgfリガンドの存在も期待できる。そこでFgf21以外のFGF受容体1のリガンド候補の検索も、研究実施計画書にしたがって進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度行う研究では、遺伝子改変動物の表現形質解析がメインで、また一部、発現解析を行う予定である。これらの解析は、薬品など、比較的多くの消耗品を必要とする。一方、これらの解析に必要となる機器類は、ほぼ現有の設備で問題無い。したがって、消耗品費に研究費のほとんどを使用するものと考えている。その他、次年度は最終年度であり、得られた研究成果を分子生物学会や薬学会などの学会に発表することを予定している。したがって旅費を一部計上した。また、研究成果を論文としてまとめるために、一部を印刷費として形状した。
|
Research Products
(6 results)