2011 Fiscal Year Research-status Report
巨大ユビキチンライゲースApollonによる小胞体ストレス制御機構の解析
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23790117
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
大岡 伸通 国立医薬品食品衛生研究所, 機能生化学部, 主任研究官 (80568519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Apollon / IAP / 小胞体ストレス / UBCドメイン / ユビキチン / アポトーシス |
Research Abstract |
アポトーシス阻害タンパク質であるApollonのノックアウトマウスでは胎盤形成不全が高頻度に認められる。また、マウス生体レベルにおいて胎盤の発達には正常な小胞体ストレス応答が重要であることが報告されている。本研究では小胞体ストレス応答におけるApollonの役割と活性制御機構の解明を目的とする。小胞体ストレス応答におけるApollonの関与を調べるために、小胞体ストレスによるApollonの発現制御を検討した。Primary mouse embryo fibroblast (MEF) を小胞体ストレス誘導剤であるtunicamycinで処理すると、処理濃度及び時間依存的に内因性Apollonタンパク質の発現が低下した。また別の小胞体ストレス誘導剤であるthapsigargin を用いたときや、NIH3T3, U2OS, MCF7などの細胞株を用いたときにも同様に内因性Apollonタンパク質の発現低下が観察された。これらのことから、小胞体ストレス誘導時にはApollonタンパク質の発現低下が起こることが見出された。Apollonはアポトーシス阻害タンパク質であることから、小胞体ストレス時にはこの機構を介したアポトーシス誘導が起こることが想定される。Apollonによる抗アポトーシス作用にはそのC末端に存在するUBCドメイン依存的な標的タンパク質のユビキチン化が重要である。小胞体ストレスによるApollonの発現抑制において、自身のUBCドメインの機能が重要であるか検討した。UBC変異型Apollonタンパク質発現量に対する小胞体ストレスの影響を調べたところ、野生型とは異なりUBC変異型タンパクの発現低下は見られなかった。この結果から、小胞体ストレスによるApollonタンパク質の発現低下には自身のUBCドメインを介した機能が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によってApollonタンパク質の発現が小胞体ストレス誘導により低下することが明らかになった。さらに、このApollonタンパク質の減少には自身のUBCドメインの機能が重要であることを見出した。他のInhibitor apoptosis protein (IAP)ファミリータンパク質と同様に、Apollonタンパク質もアポトーシス誘導時にいくつかのcaspaseにより切断され不活性化されることがわかっているが、小胞体ストレス時のApollonタンパク質の減少には自身のUBCドメインの機能が必要であることから、単にcaspaseにより切断されたことによる現象ではないことが推察される。UBCドメインはユビキチン化に重要なドメインであることから、小胞体ストレス誘導時にApollonの自己ユビキチン化が促進される、もしくはApollonが未知のタンパク質をユビキチン化することで間接的に自身の発現を低下させていることなどが想定される。まだ詳細な分子機構は明らかにしていないが、小胞体ストレスによる新たな分子制御を見出したという点で、順調に進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見出された小胞体ストレスによるApollonタンパク質の発現低下の分子機構を明らかにする。小胞体ストレス時のApollonタンパク質の減少には自身のUBCドメインの機能が必要であることから、小胞体ストレス誘導時にApollonの自己ユビキチン化が促進される、もしくはApollonが未知のタンパク質をユビキチン化することで間接的に自身の発現を低下させていることなどが想定されるので、これらについて検討する。Apollonはアポトーシス阻害タンパク質であることから、小胞体ストレス時にはApollonの発現抑制を介したアポトーシス誘導が起こることが想定されるが、実際にそのようなことが起きているか証明する。その他にもApollonによる小胞体ストレス応答の制御が存在するか検討し、分子レベルで解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降に繰り越しされる研究費が生じた理由としては、年度末の学会の参加費及び旅費が未精算であること、本年度の研究が概ね順調に進展したことから無駄な物品費がかからなかったことが挙げられる。繰り越し研究費の一部は本年度の未精算の学会参加費及び旅費に使用する予定である。また残りは、本年度の研究の進展から推測される次年度以降の研究の性質を考えると物品費が多くかかることが予測されることから、物品費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)