2011 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いた肝幹細胞の単離及び成人型肝細胞への効率的な分化手法の確立
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23790193
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
佐々木 崇光 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (20382674)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 肝分化誘導法 / CYP / トランスポーター / 転写因子 |
Research Abstract |
本年度は、既に確立しているiPS細胞の肝分化誘導法について、化学物質による誘導法の改良を行った。 「内胚葉系細胞への分化」におけるNaBの効果は、種々の条件検討の結果、最終的な薬物代謝酵素発現量に大きな差は認められなかったが、分化誘導開始5日目に行う継代において、0.5 mM NaBの5日間処理が最も内胚葉系細胞の生存率が高かった。また、「肝細胞への誘導」におけるマトリゲルは、30倍希釈に設定した。 「肝細胞の成熟」段階における、1%DMSO添加変法ランフォード培地の効果を検討した結果、通常、この段階で使用するHGF/OSM/DEX添加変法ランフォード培地(分化成熟培地)に匹敵する肝分化マーカー(ALB、AFP、HNF4α)mRNAの発現量の上昇が認められた。従って、1%DMSOは、肝分化マーカーに対してHGF/OSM/DEXに匹敵する発現誘導効果があることが明らかとなった。また、CYP、トランスポーター及び転写因子のmRNA発現に対するDMSOの効果についても同様の検討を行った。その結果、CYP2C9、CYP2C19、MRP6、NTCP、ARNT、RXRα、CARのmRNA発現量の上昇が確認された。一方、CYP1A1、CYP3A4、CYP3A7、MRP2、MRP3、OATP1B1、OATP1B3、PXR mRNAの発現量は減少し、OCT1及びAhRに関しては影響がないことが示された。さらに、変法ランフォード培地成分のうち、肝臓細胞増殖因子とエタノールアミンについて検討を行った。その結果、エタノールアミンを追加添加した分化成熟培地において、RXRαのみmRNA発現量の著しい上昇が認められた。 また本年度は、HPLC及びP450-Gloによる主要CYP分子種の酵素活性測定系の確立、さらに次年度に検討予定である遺伝子導入による肝分化誘導法の改良にも着手し、良好な結果得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「化学物質による肝分化誘導法の改良」及び「肝分化iPS細胞の機能的解析」を申請計画通り遂行した。特に、「化学物質による肝分化誘導法の改良」においては、DMSOが、肝分化マーカーやCYP等に対しHGF/OSM/DEXに匹敵する発現誘導効果を示すことを見出すことができた。作製した肝分化iPS細胞に関しては、CYP、トランスポーター、転写因子のmRNA発現量を詳細に解析し、HPLC及びP450-GloによるCYPの酵素活性測定についても着手した。さらに、次年度に予定している「遺伝子導入による肝分化誘導法の改良」のうち、HNF-6について検討した結果、良好な結果を得ている。従って、本年度は、申請通り研究が進行しているうえ、次年度の計画の一部にも着手しいていることから、概ね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「遺伝子導入による肝分化誘導法の改良」を主な研究課題とする。本年度に既に着手しているHNF-6発現アデノウイルスを用いて、肝分化誘導過程中の導入時期や導入量等を詳細に検討する。これで確立された条件を基準とし、他の遺伝子(HEX、SOX17及びc/EBPα)についても検討を行う。また、既にHNF-6導入による肝分化誘導効率の向上の可能性が見出せていることから、肝特異的転写因子の中でもkey regulatorとして機能しているHNF1α、HNF3β、HNF4αやCYP3A4の発現調節に関与することが報告されているHNF3γについても検討対象とする。さらに、近年、マイクロRNAについても肝細胞の分化成熟に重要な機能を有していることが報告されたことから、特に成熟した肝細胞において発現量の高いマイクロRNAについても検討を行う。最終的にこれらを組み合わせることで、機能性の高い肝分化iPS細胞を樹立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本年度と同様に主にiPS細胞の肝分化誘導にかかる培養関連試薬に研究費を使用する(約70万円)。また、肝分化iPS細胞については、リアルタイムPCRによるmRNA発現量測定並びにHPLC、LC/MS/MS、P450-Gloを用いたCYPの酵素活性測定を行うため、これについても研究費を使用する(約40万円)。遺伝子を導入するためのアデノウイルス発現系やマイクロRNAは既に作製及び所有しているため、大きく研究費を使用する予定はない。但し、マイクロRNAに関しては、新たに有用性の高いものが同定された場合は、随時追加していく予定である。また、得られた成果は学会及び学術雑誌において発表するため、これに関する予算も計上する(35万円)。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Association between cancer risk and drug-metabolizing enzyme gene (CYP2A6, CYP2A13, CYP4B1, SULT1A1, GSTM1, and GSTT1) polymorphisms in cases of lung cancer in Japan2011
Author(s)
Tamaki Y, Arai T, Sugimura H, Sasaki T, Honda M, Muroi Y, Matsubara Y, Kanno S, Ishikawa M, Hirasawa N, Hiratsuka M
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Journal Title
Drug Metab. Pharmacokinet
Volume: 26
Pages: 516-522
DOI
Peer Reviewed
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