2011 Fiscal Year Research-status Report
生体イメージングによる骨代謝制御のダイナミクス解析法の開発
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23790248
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤森 さゆ美 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (20589717)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 骨リモデリング / 細胞間相互作用 / イメージング |
Research Abstract |
正常な骨量は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスが保たれることにより保持されているが、これら細胞の生きた骨組織における時空間的な相互作用については明らかにされていない。本研究では、二光子励起顕微鏡を用いた骨髄内イメージング法により、生きた骨組織で破骨細胞・骨芽細胞により執り行われる骨リモデリングを動的に可視化し、細胞間相互作用を時空間的な動態解析により分析するとともに、骨疾患発症時における細胞動態の変化を明らかにすることにより、骨疾患発症メカニズムのさらなる解明を目指して研究を進めている。本研究の初年度である平成23年度には、破骨細胞と骨芽細胞の同時イメージングに必要な各レポーターマウスを作出するとともに、骨髄内イメージング法による破骨細胞および骨芽細胞の動態解析に着手した。1.骨芽細胞蛍光標識マウスの作出:骨芽細胞の標識には、分化後期の骨芽細胞を標識することが可能な2.3 kbのI型コラーゲンプロモーターを使用した。2.3 kbのI型コラーゲンプロモーター制御下に青色の蛍光色素(CFP)を発現するトランスジェニックマウス(Col1a1*2.3-ECFP)を作出し、緑色の蛍光色素(GFP)や赤色の蛍光色素(tdTomato)で標識した細胞との同時イメージングを可能にした。2.破骨細胞および骨芽細胞両標識マウスの作出:1で作出した骨芽細胞標識マウスと、単球系細胞を緑色の蛍光色素(GFP)で標識したマウス(CX3CR1-EGFPなど)、または破骨細胞を赤色の蛍光色素(tdTomato)で標識したマウス(TRAP-tdTomato)を掛け合わせることにより、破骨細胞と骨芽細胞の同時イメージングが可能な各レポーターマウスを作出した。現在、作出した各レポーターマウスについて、二光子励起顕微鏡を用いて骨髄内の破骨細胞および骨芽細胞の動態解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、二光子励起顕微鏡を用いた骨髄内イメージング法により、生きた骨組織で破骨細胞・骨芽細胞により執り行われる骨リモデリングを動的に可視化し、細胞間相互作用を時空間的な動態解析により分析するとともに、骨疾患発症時における細胞動態の変化を明らかにすることにより、骨疾患発症メカニズムのさらなる解明を目指し、申請時の研究計画に従ってこれまで研究を進めてきた。本研究の初年度である平成23年度は、本研究に使用する破骨細胞および骨芽細胞の同時イメージングに必要なマウスの入手および作出はほぼ終了し、現在は破骨細胞および骨芽細胞の動態解析の結果を基に、骨リモデリングの数理モデル化を進めているところであり、当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度のH24年度は、以下に示すように、申請時の研究計画に従って、破骨細胞および骨芽細胞の細胞間相互作用の評価に利用可能な骨リモデリングパラメーターを設定するとともに、破骨細胞と骨芽細胞の同時イメージング法を、骨粗鬆症モデルマウスを用いた解析に応用することで、骨関連疾患の発症機序の解明や薬物評価の予測に役立てる。1.破骨細胞および骨芽細胞両標識マウスを用いた骨髄内細胞動態の解析:作出した破骨細胞および骨芽細胞両標識マウスを用いて、二光子顕微鏡による骨髄内イメージングを行い、各レポーターマウスについて、破骨細胞および骨芽細胞の細胞内分布や細胞動態を解析する。また、その結果を基に、細胞間相互作用の評価に利用可能なパラメーターの選出を行い、骨リモデリングの数理モデル化を試みる。2.病態モデルマウスを用いた骨髄内細胞動態の解析:作出したレポーターマウスを用いて、卵巣摘出やRANKL投与などにより実験的骨粗鬆症モデルマウスを作製し、骨髄内イメージングにより、骨減少症発症時における骨芽細胞および破骨細胞の動態変化を経時的に観察する。その際、組織レベルでの骨形態変化と、細胞動態データを照らし合わせて分析することにより、骨組織の変化に先立って細胞動態の変化を捉える事が可能かどうかについて、1で選出した骨リモデリング候補パラメーターを中心に解析する。3.破骨細胞と骨芽細胞の同時イメージング法を用いた新たな技術開発の提案:破骨細胞と骨芽細胞の同時イメージングによる骨代謝制御のダイナミクス解析の結果から、骨病変のどの時期にどの細胞に変化が認められるか、また、骨リモデリングに影響を与える薬物が、どの時期にどの細胞に効果を示すかを明確にし、これらの結果を骨関連疾患の発症機序の解明や薬物評価の予測に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究費の使用計画に関しては、申請時に記載した内容に変更はなく、本研究費の約80%は消耗品費として使用される。具体的には、破骨細胞および骨芽細胞の同時イメージングの際に必要な、イメージング実験関連の消耗品や、in vitroでの破骨細胞や骨芽細胞の培養に必要なサイトカイン類(RANKL, M-CSF)などの細胞培養関連の消耗品を購入する。また、組織や培養細胞から抽出したRNAおよび蛋白質を用いた解析に使用する酵素や抗体など、生化学・分子生物学的実験に必要な消耗品を購入する。実験的骨粗鬆症モデルマウスを作製した際には、骨病変の進行の評価に必要な組織学的解析を行うため、骨関連マーカーの抗体(RANK抗体、Osterix抗体など)等を購入する。また、本研究費の約20%は、本研究の国内外での研究成果の発表や情報収集にかかわる旅費として使用される。基本的な研究機器については、当該研究拠点に共同機器として設置されているものを使用するので、本研究費では現在のところ新たな設備備品購入の予定はない。
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