2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病モデル動物の心房細動発生におけるIfチャネルリモデリングの役割
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23790249
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
篠原 徹二 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (60457629)
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Keywords | 洞房結節 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
糖尿病の病態は血中のレプチン蛋白に強く影響を受けている。一方,糖尿病患者では心房細動の発生が多く起こっていることが報告されているが,そのメカニズムは明らかではない。我々は,糖尿病患者において増加している血中レプチンがIfチャネルのリモデリングを起こして心房細動発現に関与しているのではないかと考え,研究を行った。まず,第一段階として,レプチンが心房筋線維化にどのように影響を与えるかを検討した。アンギオテンシンIIのマウスへの添加は左房筋の線維化を引き起こし,心房細動の易誘発性を高めた。しかし,この効果はレプチン欠損マウスでは認めなかった。正常マウスではアンギオテンシンII添加によって左房心筋内のレプチン産生は増加していた。in vitroの実験では心筋線維芽細胞へのレプチン添加は線維化を促進することを認めた。これらの実験結果から,レプチンシグナル経路がアンギオテンシンIIによって促進される心房の線維化および心房細動の易誘発性に関係していることが示唆された。さらに我々は一歩進めて,インスリン抵抗性が洞結節機能にどのように影響し,洞結節リズムを修飾するのかを検討した。洞結節リズムはIfチャネルを中心としたmembrane clockと筋小胞体からのCa放出によるCa clockに影響を受けているとされているが,我々はインスリン抵抗性モデルラットにおいては,その両方のメカニズムが障害を受けていることをウェスタンブロットとPCR法を用いて確認した。そして,生体ラットに心房ペーシングを行ったところ,インスリン抵抗性モデルラットにおいて洞結節機能低下を認めた。このことはインスリン抵抗性を有する肥満患者において,洞結節機能低下を伴った心房細動発生が起こることを示唆する結果であり,今後増加が予想される心房細動患者の発症予防治療につながることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病患者では血中レプチン濃度は高値である一方,心房細動の発生が多く起こっていることが報告されている。我々の現在までの研究によって,これまで明らかにされていなかった糖尿病と心房細発生の間にレプチンホルモンの関係が示唆されるデータが得られ,糖尿病患者における心房細動発現のメカニズムの解明に確実に一歩前進している。具体的には, Angiotensin IIというホルモンによって心房の線維化が誘導される際に,その誘導にレプチンシグナル経路が関与していることを証明することができた。そしてさらにその誘導が房細動の易誘発性に関係していることも併せて示すことができた。その結果については,すでにRole of Leptin Signaling in the Pathogenesis of Angiotensin II - Mediated Atrial Fibrosis and Fibrillation. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2013に報告している。この分野の一流雑誌に掲載されたことから,我々の研究が注目されていることが示された。また,インスリン抵抗性が洞結節機能にどのように影響し,洞結節リズムを修飾するのかを検討した結果は,2013年3月横浜で開催された第77回日本循環器学会学術集会で報告し,多数の質問を受け注目された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の集大成として糖尿病におけるIfチャネルのリモデリングを評価していきたいと考えている。その際,Ifチャネルリモデリングにレプチンホルモンが関与しているか否かを解明していく。関与していた場合には,そのシグナル経路を抑制することで心房細動発現の予防につながるかどうかも併せて検討していく。この実験方法として,2型糖尿病モデルラットとして,Otsuka Long Evans Tokushima Fatty Rat(OLETラット)を用いて実験を行っていく。Ifチャネルの構成蛋白であるHCN4の蛋白量をウエスタンブロット解析で評価したり,PCRを用いてmRNAレベルでの評価も併せて行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず,4月から10月までの半年間はこれまでの集大成としての追加実験を行う。具体的にはコントロールモデルと糖尿病の動物モデル(OLETラット)を購入して,Ifチャネルリモデリングの有無を検討する。さらに,そのシグナル経路を解明するために,適宜ウエスタンブロット用の抗体およびPCR用のプローブを購入する。さらに,後半の11月から3月までの期間で,実験結果のまとめを行う。その成果を国内および国際学術集会で発表し,さらに国際的に読まれている一流雑誌に投稿し掲載されることを目指す。
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