2011 Fiscal Year Research-status Report
活性酸素の生産と消去に関与するミネラルトランスポーターの分子メカニズム
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23790264
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊地 晶裕 金沢大学, 医学系, 博士研究員 (90321752)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 活性酸素 / ミネラル / トランスポーター / タンパク質結晶構造解析 / X線吸収スペクトル |
Research Abstract |
活性酸素の生産に関与する鉄のトランスポーターであるミトフェリンは、膜タンパク質であり、大腸菌を用いた発現系では封入体として得られる可能性が高い。そのため、結晶化を試みる前に、発現させたタンパク質をリポソームに再構成し、その機能を評価する事が必須である。本研究では、マイクロビームを用いたX線吸収スペクトルを用いてトランスポート活性の評価を行う計画である。X線吸収スペクトルを用いる利点としては非破壊的であること、また、鉄イオンの酸化数や配位構造を反映したスペクトルが得られるため、スペクトルを詳細に解析することが出来れば、トランスポート活性の有無だけではなく、ミトフェリンによる鉄イオンの輸送メカニズムを分子レベルで推測することも可能となる。本年度はそのような評価系の構築を目指し、大型放射光施設SPring-8のビームラインを用いて予備的なX線吸収スペクトルの測定を行なった。測定にはスペクトルの定性的な評価が行いやすい銅錯体や銅タンパク質を試料としたが、得られたスペクトルの解析から、構造が未知であるタンパク質に結合した銅イオンの酸化数や構造の明らかにすることに成功した(論文投稿の予定)。従って、同様な測定をリポソームに再構成したミトフェリンに対して行うことでトランスポート活性の評価にも適応可能であると期待ができる。 活性酸素の消去に関与するセレンのトランスポーターであるセレノプロテインPは、ヒト血漿から精製を行なったが、精製試料にも異性体が混入していることが判明し、また、収率も極めて低かった。結晶化を行うにはさらに高い純度の試料を高収率で得ることが必要であり、本年度は精製法の改良を行なってきた。異性体の混入を防ぐためには強力なプロテアーゼインヒビターを血漿の前処理段階において添加することが効果的であることが判明したが、収率の改善には至っておらず、さらなら精製法の改良が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は研究代表者の所属研究機関変更(理化学研究所から金沢大学)があり、金沢大学においてタンパク質の発現~精製に用いる機器等のシステムを新たに立ち上げを行う必要が生じた。申請書の記載時点において所属研究機関変更は考慮に入れていなかったため、結果的に研究計画から遅れている。しかし、ヒト由来試料の扱いなど、所属研究機関変更による利点も大きく、次年度での挽回は可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトフェリンに関しては大腸菌による発現系を目指すが、本年度の検討結果からコドンの最適化が有用である可能性が高い。そこで、合成遺伝子を用いて発現を試みる。発現の確認が出来れば、本年度に構築したトランスポート活性の評価系を用いて活性の有無、さらに、分子レベルにおける鉄イオンの輸送メカニズムの解析を行う。また、研究代表者の所属研究機関変更に伴い、哺乳類細胞を用いた発現系も利用することが出来るようになった。そこで、研究の計画段階では考慮をしていなかったが、HEK293細胞やCHO細胞などを用いた発現系により組み換えタンパク質を得ることも検討する。 セレノプロテインPに関しては精製法をさらに改良し、より高純度な試料を得ることを目指す。修飾された糖鎖を切断することで試料の均一性が向上し、より結晶化に適した試料になる可能性は高い。そこで、糖鎖修飾の切断も含めた精製法を確立し、結晶化ならびに結晶構造解析を行う。 本研究は細胞内における活性酸素の制御メカニズムを生産と消去の両面からアプローチすることを目指しているが、本年度の達成度はミトフェリンよりもセレノプロテインPが相対的に高い。また、セレノプロテインPはセレン含有タンパク質であるため、結晶が得られればセレンの異常分散効果により位相を決定することが可能である。そこで、次年度はセレノプロテインPにより重点をおいた研究の推進方策を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の所属研究機関変更により、研究の達成度は遅れており、本年度に計画していた遺伝子合成、試薬やカラムの購入が出来なかった。そのため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。次年度に請求する研究費と合わせて、精製に必要なカラムや結晶化用のプレートなど、主に消耗品を購入する。また、所属研究機関変更に伴い、結晶を観察する実体顕微鏡が不足している。そのため、設備備品費とはなるが、実体顕微鏡の導入も検討している。 結晶化や結晶の回折データ測定・構造解析にあたっては、研究代表者の前の研究機関(理化学研究所播磨研究所/SPring-8)への移動も必須である。さらに、成果の発表は情報交換を行うため学会等への参加も予定しており、国内旅費としても使用する。
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Research Products
(1 results)