2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790283
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡部 美穂 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10399321)
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Keywords | GnRHニューロン / GABA / KCC2 / NKCC1 / 神経内分泌学 / 性周期 / 生殖生理 / 神経科学 |
Research Abstract |
脳による生殖内分泌調節の最終共通路は視床下部に存在する生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンである。成熟動物の脳内において主要な抑制性伝達物質であるGABAが成熟動物においても興奮性に作用しているというGnRHニューロンに特有な性質に注目し、生殖機能におけるGABA興奮性作用の役割について個体レベルで検討を行った。Tet-offシステムを用いてGnRHニューロンのみで時期特異的可逆的にGABAの抑制性を維持するトランスポーターであるカリウム-クロライド共役担体(K+-Cl- cotransporter (KCC2))を過剰発現させることにより、GnRHニューロンへのGABA入力を興奮性から抑制性に変化させることができる遺伝子改変マウスを作製した。このマウスではドキシサイクリン投与中止により、GnRHニューロンでKCC2 mRNAおよびKCC2タンパクを発現誘導できることをin situ hybridizationおよび免疫染色法により確認した。性成熟後、ドキシサイクリン投与中止によりGnRHニューロンへのGABA入力を興奮性から抑制性に変化させ、膣スメアを採取し、性周期の変化を調べたところ、発情期が続き性周期が乱れていた。卵巣を組織学的に観察したところ、卵巣の萎縮がみられた。さらに、野生型の雄マウスと同居させ交配テストを行った結果、妊娠率の低下がみられ、ドキシサイクリンの再投与によりGnRHニューロンへのGABA入力を興奮性に戻すと、すべてのマウスで妊娠が認められた。以上の結果から、GnRHニューロンへのGABA興奮性作用は雌の生殖機能において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに作製したGnRHニューロンで時期特異的可逆的にKCC2を過剰発現させることにより、GABA入力を興奮性から抑制性に変化させることができる遺伝子改変マウスを用いて、本年度はGnRHニューロンにおけるGABA興奮性作用の役割について個体レベルで検討することができた。GABA作用を興奮性から抑制性に変化させた時の生殖機能の変化を調べ、性周期や妊娠率、卵巣の形態に変化がみられることを明らかにすることができた。 また、GnRHニューロンで光活性化タンパク質チャネルロドプシン2を発現させた遺伝子改変マウス(GnRH-tTA::tetO-ChR2-EYFPマウス)を用いて、光刺激によりGnRHニューロンの活動を刺激し、排卵を引き起こすことができるか検討して研究成果をとりまとめる予定であった。しかし、GnRH-tTA::tetO-ChR2-EYFPマウスの繁殖能力が低く、実験に用いるのに十分な数のマウスが得られなかったため再度交配が必要になり、光刺激実験に用いるマウスの確保に遅延が生じた。このため、研究期間を延長し、GnRHニューロンの光刺激実験を引き続き行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
GnRHニューロンに光活性化タンパク質チャネルロドプシン2を発現させた遺伝子改変マウスを作出し、光操作でGnRHニューロンの活動を刺激し、排卵を引き起こすことができるか検討する。GnRH-tTAマウスとチャネルロドプシン2-tetO-EYFPマウスを交配させ、GnRHニューロン特異的にチャネルロドプシン2を発現させたマウスを作出する(GnRH-tTA::tetO-ChR2-EYFPマウス)。視床下部内に青色LEDプローブを留置し、青色光照射によりGnRHニューロンを刺激し、GnRHニューロンの活動を光により操作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オプトジェネティクスに必要な光ファイバーカニューラやLED光源等、また、光刺激後に血中ホルモンを測定するためにラジオイムノアッセイを行う際に必要な試薬、器具等の経費に使用する。実験動物の購入や作成した遺伝子改変マウスの飼料や維持費に使用する。
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Research Products
(5 results)