2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症時におけるトランスロケータープロテイン遺伝子の転写調節機構に関する研究
Project/Area Number |
23790314
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 強 独立行政法人理化学研究所, 分子プローブ機能評価研究チーム, 研究員 (20419708)
|
Keywords | トランスローケータープロテイン / 炎症 / 転写 |
Research Abstract |
ミトコンドリアに存在する18kDaのタンパク質、トランスローケータープロテイン(TSPO)/末梢型ベンゾジアゼピンレセプター(PBR)は、炎症時に誘導されることが知られている。そのため、炎症の、特に脳内炎症の指標として、多くの研究が行われている。しかしながら、現在までにTSPOタンパク質およびTSPO遺伝子の誘導機構については、その詳細が明らかにされていない。 炎症誘発剤リポポリサッカライド (LPS)を用いて炎症を誘発する研究は広く行われているので、LPSを用いてラット神経膠腫細胞C6細胞を処理した後、ルシフェラーゼアッセイにより、TSPO遺伝子の転写に関わる領域を調べてきたけれども、少なくとも、マウスおよびラットTSPO遺伝子の上流500bp付近においては、炎症特異的な転写調節領域を見出すことができていなかった。 今回、マウスの遺伝子に絞ってTSPO遺伝子における上流領域のクローニングを行い、ルシフェラーゼアッセイによって、この領域に炎症特異的な転写調節領域が存在するかの探索を行った。その結果、およそ1500bpまでの領域において調べてみたけれども、これらの領域においても、目的とする炎症に応答する転写調節領域を見出すにいたらなかった。今回行ったLPS処理によってきちんと炎症が誘発され、目的の遺伝子が発現誘導しているかの確認をお行ったところ、TSPO遺伝子のみならず、もうひとつの炎症マーカーであるシクロオキシゲナーゼ-2タンパク質が誘導されていることも確認できた。そのため、実験条件には問題がないことは確認できている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
TSPO遺伝子における炎症特異的転写調節領域の特定がまだできておらず、予定より大幅に遅れている。しかしながら、少なくともマウスの遺伝子において1500bp上流には存在しない可能性を示すことができたという点では、一歩前進していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでTSPO遺伝子の上流領域を、転写開始点付近を調べるのみであった。ある遺伝子の転写活性化領域が、おおよそ1万bp上流に存在し、遺伝子の発現調節に関与することから、TSPOにおいても、かなり距離の離れた領域に、炎症特異的転写調節領域を有しているかもしれない。転写開始点からさかのぼって領域を探索するとともに、5000bp以上離れた領域からも転写調節領域の探索を行い、TSPO遺伝子のLPS処理によって誘導される際に、関与するシスエレメントおよび転写調節因子の同定を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進行が遅れたため、実験が先に進まず、そのため翌年への持ち越し金が発生した。 次年度の実験形態の主なものは、細胞培養、クローニングおよびルシフェラーゼアッセイなどが挙げられる。 そのため次年度における研究費の使用としては、主に試薬および消耗品の購入に充てる予定である。 また初年度において発生した持ち越し金は、次年度において行う実験に必要となる試薬および細胞培養に必要なディスポーザブルのピペット、ディッシュなどの消耗品の購入に充てる予定である。
|