2011 Fiscal Year Research-status Report
PHA2型の原因遺伝子であるWNK及びそのシグナル伝達経路の包括的解析
Project/Area Number |
23790358
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 淳 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (30451925)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | WNK / 偽性低アルドステイン症2型 / モデル生物(ショウジョウバエ) |
Research Abstract |
偽性低アルドステロン症2型は、特定疾患にも指定されている難病であり、低レニン性高血圧症と共に、精神発達遅延、身体の奇形を伴った症状を示す常染色体優性の遺伝病である。その原因遺伝子として、WNKキナーゼが単離され、腎臓においてナトリウムやカリウムの共輸送体を制御していること、その制御異常が高血圧症の原因となることが既に示された。しかしながら、腎臓での制御異常が精神発達遅延や身体の奇形といった症状の原因とは考えられず、共輸送体の制御機構以外にもWNKが機能を持っていることが考えられている。我々は、新たに転写因子Lhx8がWNKの下流で機能していることを見出した。このことは、Lhx8が口腔部の形成やアセチルコリン作動性神経の発生において重要な機能を果たしていること、PHAIIの患者において歯や骨の発育不全や精神発達遅延などの症状が現れることを考えると、非常に重要な因子である可能性が高い。平成23年度においては、Lhx8の上流13kbを用いて、Lhx8の制御機構の解析を行い、Lhx8の上流の約4.5kbから6.5kbの間に重要な制御領域があることを明らかにした。その制御領域に結合する候補因子として、既に報告されていたLhx8の制御因子Nkx2.1等を調べたが、全てWNKと関連がないことが分かった。また、更なるWNKとの相互作用因子を見出すために、ショウジョウバエを用いたスクリーニングを開始した。WNKの異所発現による異所的な翅脈形成という表現型を指標に、この表現型を回復または亢進させる新たな因子をスクリーニングしている。現在までに1万を越える候補系統から、43系統の候補を得た。今後は、Lhx8の制御機構の更なる解析とともに、スクリーニングの続行及び、候補系統の詳細な解析を行っていくことで、偽性低アルドステイン症の発症メカニズムの解明、及び創薬の可能性についても探っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
偽性低アルドステイン症II型の高血圧症以外の未解明の病態の発症にも、WNKが関与する可能性が示されたことから、本研究では、WNKによる新規下流因子の制御機構をはじめ、さらにWNKシグナル伝達経路の包括的な解析を試み、最終的には発症機構の解明や新たな治療法の開発につなげることを目的としている。平成23年度において、既知のLhx8制御因子がWNKと関連がないことが判明するなど、当初の予想とは異なる結果となってしまったが、WNKシグナル伝達経路の新たな因子を単離するためのスクリーニングを開始し、既に多数の候補系統を得ることが出来るなど、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度のスクリーニングにより予想以上の候補系統が得られたことから、24年度においてはスクリーニングを行わず、既に開始している候補系統の解析に注力していく。また、Lhx8の制御領域のより詳細な解析を行っていくと共に、スクリーニングにより得られた候補因子と制御領域との相互作用解析を行っていくことで、候補系統の解析をさらに促進できると考えている。以上のように、研究課題の進展をより推進していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度において、既知の全てのLhx8制御因子がWNKと関連がないことが判明したため、制御領域の詳細な解析を行うにあたり、当初の予定とは異なる状況が生じてしまった。24年度においては、Lhx8の制御領域の解析及びスクリーニングで得られた因子の解析を行っていくが、予想以上の候補系統が得られたことから、候補系統の解析には当初より多くの研究費を必要とするため、23年度からの繰り越し研究費と合わせ、研究を進展させていきたい。
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