2011 Fiscal Year Research-status Report
新規O結合型糖転移酵素BCGT1による乳癌発症・進展機構の解明と臨床応用への展開
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23790369
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松尾 泰佑 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 助教 (70533222)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 乳癌 / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、乳癌特異的に発現が亢進している遺伝子としてO結合型糖転移酵素BCGT1を同定し、RNA干渉法によりBCGT1遺伝子の発現を抑制した際に乳癌細胞の増殖が顕著に抑制されたことから、BCGT1は乳癌の細胞増殖に重要な分子であることを明らかにしている。そこで初年度は、BCGT1がどのような分子機構により乳癌細胞の増殖を制御しているのか明らかにすることを目的として以下の解析を行った。 まずBCGT1により制御されているタンパク質を同定するために、質量分析法を用いてBCGT1の発現を抑制した際に変化が生じるタンパク質の同定を試みた。その結果、BCGT1の発現を抑制した乳癌細胞において複数の小胞体分子シャペロンの発現が低下していることが確認された。そこで、この変化がタンパク質の安定性の低下によるものか、mRNAの発現が低下することにより生じた結果なのか明らかにするために、real time PCR法によりmRNAの発現変化を調べた。その結果、質量分析法により同定された小胞体分子シャペロンはmRNAの発現低下により引き起こされていることが示された。小胞体分子シャペロンは癌細胞が低酸素や低グルコースなどのストレスに曝された際に引き起こされる小胞体ストレス応答により発現が亢進される分子であり、癌細胞の生存および増殖に重要な役割を果たしていることが知られている。従って、BCGT1による小胞体分子シャペロンの発現制御が、乳癌細胞の増殖を促進している可能性が示唆された。 現在、BCGT1がどのようなメカニズムで小胞体分子シャペロンの転写活性を制御しているのか解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はBCGT1によって制御されている分子機構を明らかにできたため、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の計画で研究を進める。1.BCGT1がどのようなメカニズムで小胞体分子シャペロンの発現亢進を制御しているのか明らかにし、BCGT1による乳癌細胞増殖機構を解明する。2.BCGT1は複数のタンパク質に糖鎖修飾を行い、その機能を制御していると考えられるため、BCGT1の新たな基質タンパク質の同定とその機能解析を進めていく。3.BCGT1遺伝子の発現を制御する転写因子を同定し、乳癌における発現亢進機構を解明する。4.免疫組織染色によりBCGT1の発現と臨床情報との関連を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も基本的に乳癌細胞を用いた研究が主となるため、細胞培養用試薬(培地、添加物)・器具(ディッシュ、ピペット)を購入する。また、BCGT1の基質タンパク質を同定するために、免疫沈降用試薬、質量分析関連試薬が、その後の解析には遺伝子のクローニング関連試薬、糖転移酵素活性測定試薬、基質タンパク質検出用の抗体が必要である。さらに細胞増殖測定キットおよびsiRNAおよびその効果を測定するためのreal time PCR酵素、免疫組織染色用試薬、ならびにBCGT1の転写因子同定するためにルシフェラーゼアッセイキット、クロマチン免疫沈降キットを購入する予定である。
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Research Products
(3 results)