2011 Fiscal Year Research-status Report
新規膵癌関連遺伝子ZIC2による細胞増殖メカニズムの解析
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23790424
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
稲熊 真悟 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80410786)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 膵臓癌 / 転写因子 / ZIC2 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
Zinc-finger型転写因子ZIC2は、Shh-GLI1シグナル経路やSIX3遺伝子とともに、中枢神経の発生に不可欠な遺伝子であり、全前脳胞症(holoprosencephaly)の原因遺伝子として知られている。また、ZIC2は固形腫瘍の発がんにおいても何らかの役割を担っていると考えられており、まずはPanc-1, KP-4をはじめとする膵臓癌細胞株計11株におけるZIC遺伝子群の発現を検討した。その結果、いずれの細胞株もZIC2のみを高発現しており、ZIC2が膵発がんに関与している可能性が示唆された。そこで、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを用いて、Panc-1細胞株にFlag-ZIC-2を強制発現させたところ、有意に細胞増殖能が上昇した。他方で、ZIC2特異的siRNAをPanc-1, KP-4細胞株に遺伝子導入したところ、いずれの細胞株も有意にその細胞増殖能が低下し、膵臓癌細胞株がZIC2依存的な細胞増殖を示すことを明らかにした。これらのデータをもとに、膵臓癌外科切除材26例を用いて、ZIC2発現とKi-67(MIB-1)陽性率を免疫組織学的に検討した結果、正常膵管上皮からPancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)、浸潤癌と病変異型度が増すにつれてZIC2発現、Ki-67陽性率は漸増し、ZIC2の発現強度とKi-67陽性率とが有意な正の相関(ρ=0.773, p<0.0001, Spearman's rank correlation)を示すことも明らかにした。今後は、cDNAマイクロアレイ解析、miRNAアレイ解析の結果同定した、353のZIC2標的mRNA群と、23のZIC2標的miRNA群を詳細に解析し、ZIC2による膵臓癌細胞増殖機構を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。その理由として、以下の4点が挙げられる。(1)膵臓癌細胞株の収集や、遺伝子発現ベクターの構築、膵臓癌外科切除材料の収集など、研究計画遂行に必要な準備が効率的に行われた。(2)合成されたsiRNAオリゴによる遺伝子knock-down効率が高く、予定していたin vitroの実験計画が順調に遂行された。(3)購入した1次抗体の特異性が比較的高く、免疫組織学的解析も遅滞なく行うことができた。(4)cDNAマイクロアレイ解析、miRNAアレイ解析に関して、外部企業に解析依頼をすることで、研究の効率化を行った。次年度も、効率的な研究計画の遂行を心掛けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ChIP-sequence技術を用いて、ZIC2が結合するゲノム領域を同定し、cDNAマイクロアレイ解析、miRNAアレイ解析にて同定されたZIC2の転写標的候補遺伝子群、転写標的候補miRNA群より、直接的な転写標的を抽出する。さらに、文献やデータベースをより細胞増殖活性に影響を与えることが予測される転写標的を選択し、そのプロモーター/エンハンサー領域を単離、pGL4レポーターベクターに組み込む。作成されたレポーターベクターを用いて、レポーターアッセイを行い、ZIC2の直接的転写標的遺伝子であることを確認する。また、ZIC2の強制発現と転写標的遺伝子のknock-downを組み合わせて行い、BrdU取り込みアッセイや、フローサイトメトリー解析を用いて、ZIC2が転写標的遺伝子を介して細胞増殖、細胞周期に及ぼす影響とそのメカニズムを解析する。転写標的遺伝子に関しては、膵臓癌組織を用いた免疫組織解析も行い、ZIC2の発現強度やKi-67陽性率との関連を統計学的に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述した研究計画にもとづき、ChIP-sequence解析を行う際の外注費用が必要となり、ここの支払いに、前年度の残金を用いる予定である。また、ベクター作成、レポーターアッセイ用の試薬、knock-down実験に必要な合成オリゴ、細胞培養に用いる培養液、血清等とともに、プラスチック製品など、分子生物学的実験に関連した消耗品費を購入する予定である。免疫組織学的解析用の一次抗体、二次抗体、発色試薬も購入を予定している。成果の一部を発表する為に学会出張費を支出する可能性があるが、人件費や物品購入費を支出する予定はない。
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Research Products
(1 results)