2011 Fiscal Year Research-status Report
毒素性ショック症候群毒素-1の新規機能による黄色ブドウ球菌細胞内寄生メカニズム
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23790467
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浅野 クリスナ 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70598622)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 感染症 / 細胞内寄生 |
Research Abstract |
黄色ブドウ球菌の内皮細胞及び上皮細胞への感染におけるtoxic shock syndrome toxin 1(TSST-1)の関与を明らかにする目的で、黄色ブドウ球菌野生株(WT)と、申請者が作製したTSST-1欠損株(Δtst)を培養内皮細胞(HUVEC株)及び上皮細胞(HEK293株、407株、HeLa229株)に感染させ、菌の接着、細胞への侵入、細胞内増殖、small colony variantの形成、及び細胞毒性について、それぞれ解析を行った。1.菌の接着、細胞への侵入、及びsmall colony variantの形成については、いずれも黄色ブドウ球菌野生株とΔtstの間で差異のないことが明らかになった。2.細胞内増殖については、菌(野生株、Δtst、及びΔtst+recombinant TSST-1)の感染後、感染早期の細胞内菌数の定量(細胞内侵入)、及び感染後の経時的な細胞内菌数の定量(細胞内増殖)を行った。細胞内侵入については、TSST-1の欠損の影響を受けなかった。一方、細胞内増殖については、ΔtstがΔtst+recombinant TSST-1に比べ高い菌数を示し、TSST-1は黄色ブドウ球菌感染の細胞内メカニズムに関わることが示唆された。また、TSST-1がオートファゴゾームの形成を抑制するという興味深い結果が得られた。3.細胞毒性について遺伝子組み換えTSST-1とLPSのHeLa229株に対する投与を行った結果では、ミトコンドリア傷害による細胞毒性はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画に沿って黄色ブドウ球菌感染の各段階におけるTSST-1の関与を網羅的に解析し、TSST-1が感染の細胞内メカニズムに関わる可能性を明らかにした。研究は、ほぼ計画通りに遂行されている。但し、当初の計画で使用予定だったいくつかの宿主細胞株を用いた解析、野生株とTSST-1欠損株を用いた細胞毒性の解析、及び菌感染後の細胞内局在については、今後に実験を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、科学研究費申請時の目的、計画に沿って研究を進める。平成24年度は、平成23年度の結果に検証を加えながら、更にTSST-1の関与する黄色ブドウ球菌感染メカニズムについて解析を行う。特にTSST-1によるオートファゴゾーム形成の抑制、およびTSST-1による宿主内増殖抑制について、分子メカニズムの解明を目的として研究を行う。ツールとして、申請者が所属する研究グループで作製した遺伝子組換えTSST-1(rTSST-1)、及びスーパー抗原活性を欠損させた改変型TSST-1(mTSST-1)を用いて、両因子が効果を示すことを確認し、TSST-1のスーパー抗原以外の新規の活性を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、いくつかの宿主細胞株を用いた解析、及び野生株とTSST-1欠損株を用いた細胞毒性の解析について実施が先送りとなった等の理由で、繰り越しの研究費400,000円が発生した。平成24年度は、繰り越しを含めた交付金1,500,000円を、以下の用途に活用することを計画している。・細胞培養関連、遺伝子・タンパク質解析関連、一般試薬の購入のための物品費として1,270,000円・成果発表のための旅費として130,000円・その他、論文作成費や学会誌投稿料として100,000円
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