2011 Fiscal Year Research-status Report
新規Tax1結合因子を介したHTLV-1発癌の悪性化機構
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23790498
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80377192)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | HTLV-1 / Tax1 / ROS / USP10 / G3BP1 |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであり、ATLの発症にはゲノム異常が蓄積することが必須である。HTLV-1がコードする発がん蛋白Tax1は、ゲノム異常の原因となる活性酸素種(Reactive oxygen species; ROS)の異常産生に関与することが報告されているが、その分子機序は未だ不明である。そこで本研究では、Tax1に結合する因子として我々が同定したUSP10を切り口にして、以下の実験を実施した。1、USP10による細胞内ROS産生誘導の制御機構(1)USP10欠損マウスからUSP10欠損細胞を樹立した。まず、USP10欠損細胞では野生型細胞よりも亜ヒ酸処理下において形成されるストレス顆粒(Stress granule; SG)の形成能が低下すること、その後に誘導されるアポトーシスが著しく昂進することを見出した。このアポトーシスの昂進は抗酸化剤処理により阻害された。(2)次に、野生型USP10が亜ヒ酸処理によるROS産生を抑制する一方、SG形成能を欠くUSP10変異体はこの活性を消失した。以上より、USP10によるSG形成がROS産生を抑制することが明らかとなった。(3)G3BP1によるSG形成にはUSP10との結合が必要であり、さらにそのSG形成細胞ではROS産生能が低下していた。2、Tax1によるROS産生誘導の制御機構(1)USP10との結合活性を欠くTax1変異体を作製し、SG形成能に対する作用を検討したところ、野生型Tax1がSG形成を抑制する一方、Tax1変異体はその活性を失った。(2)Tax1のROS産生能は、USP10ノックダウン細胞において低下した。以上の結果から、Tax1はUSP10の機能を阻害することで細胞内ROSの異常産生に関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書における、目的(2)研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか、において初年度に予定していた計画、具体的には、1.USP10がストレス応答シグナルにおけるどの部分に作用するのかを同定し、いかにしてROS産生を抑制するのかを明らかにする。2.USP10によるROSの産生抑制機序に対し、Tax1がどのように作用することによってROS産生昂進に導くのかを明らかにする。をある程度達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおりに進めているが、今後さらなる詳細な分子機序を明らかにする必要がある。具体的には、USP10によるROS産生制御機序に関わる因子の同定を行なっていく。さらに申請者らはUSP10ノックアウトマウスを樹立し、その表現系解析をすでに開始しており、分子・細胞・動物レベルで総合的に解析する。具体的には、ROSの産生異常が白血病発症の原因であるのか明らかにするため、抗酸化剤の投与がUSP10ノックアウトマウスの白血病発症頻度を低下させるのか、さらにはDNA損傷を減弱させるのかについて調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費からは、物品費;1400,000、旅費;100,000、論文投稿費用;100,000(円)を予定している。
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