2011 Fiscal Year Research-status Report
エンベロープウイルスに対する抗ウイルスペプチド薬の新戦略
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23790509
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
氏家 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (50415478)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 抗ウイルス薬 / コロナウイルス / 細胞侵入 / Heptad-Repeat / 膜融合 |
Research Abstract |
本研究は、ウイルスの膜融合蛋白質のheptad-repeat(HR)領域を標的とした抗ウイルスペプチド薬(HRP)をエンドソーム指向性(eHRP)に改変することで、エンドサイトーシスで細胞に侵入するエンベロープウイルスの感染を効率よく阻止する抗ウイルス薬の開発を目的とする。本年度は、eHRPのデザインとその抗ウイルス活性の評価系の構築を行い、以下の成果を得た。1) eHRPの作製:コレステロール(Chol)を結合したHRP(Chol-HRP)は、Cholを介して細胞膜に結合し、エンドソーム膜に取り込まれると考えられる。従って、eHRPの候補としてChol-HRPの作製を行った。2) eHRPの抗ウイルス活性の評価: サーズコロナウイルス(SCoV)のS蛋白質は膜融合活性を持つが、この活性にはプロテアーゼを必要とするため、プロテアーゼの局在に依存して、細胞質膜と融合し細胞表面から直接侵入する経路と、エンドサイトーシスによって取り込まれエンドソーム膜と融合し侵入する2つの感染経路を使い分ける。上記で作製したChol-HRPを、SCoVと同様の細胞侵入様式をもつSCoVpp[VSVの粒子表面にSCoV-S蛋白質を持つシュードタイプウイルス]を用い2つの経路で評価した結果、Chol-HRPは、SCoVppの細胞表面経路とエンドソームを介した経路の両侵入経路に対して高い抗ウイルス活性を示した。一方、コントロールペプチドのHRPは細胞表面経路しか抑える事が出来なかった。これらのことから、エンドソーム親和性のChol-HRPは、SCoVppの細胞表面からの侵入経路だけでなくエンドソームからの侵入経路に対しても高い抗ウイルス活性を持つことが示唆された。今後は、新たなタイプのeHRPを作製する共に、Chol-HRPがどの部位でどのタイミングで抗ウイルス活性を示すか詳細な解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は、大きく分けると平成23年度にはエンドソーム親和性ペプチド(eHRP)のデザイン、平成24年度にはeHRPの抗ウイルス活性の評価を行う予定であった。平成23年度中にeHRPの作製と抗ウイルス活性の評価を行う事が出来たものの、作製したeHRPは計画していた4つのeHPRの内1つしか作製出来ていないため、達成度を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作製したChol-HRPは、細胞表面経路及びエンドソームを介した経路の2つの侵入経路で高い抗ウイルス活性を示しており、これらの結果は、エンドソーム親和性のeHRPが細胞表面侵入経路だけでなく、エンドソームの侵入経路に対しても高い抗ウイルス活性を示すことを示唆している。この一方で、今回デザインしたChol-HRPが本当にエンドソームに取り込まれているのか、取り込まれていたとするとどのタイミングで抗ウイルス活性を発揮するのか、詳細なメカニズムは不明なままである。これらを明らかにするため、Chol-HRPが、どの部位でどのタイミングで抗ウイルス活性を示すかさらに詳細な解析を行う。また、研究計画にて候補に挙げていたほかのタイプのeHRPのデザインも試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、合成ペプチドの作製とその抗ウイルス活性の評価を行う。合成ペプチドの作製には、タンパク質精製キット、コレステロール付加試薬に加え一般的な遺伝子組み換え関連試薬(発現ベクター・PCR関連・シーケンス等)を必要とする(計66万)。ウイルスのエントリーアッセイに使用する試薬として各種プロテアーゼ及び阻害薬で計30万、ペプチド解析に用いる蛍光試薬類で30万、細胞培養器具/プラスチック器具類で20万使用する予定である。旅費については、大高教授(徳島大学)との打ち合わせに10万、国内研究成果発表(日本ウイルス学会または日本獣医学会)として10万。謝金等として、外国論文への投稿費・校閲費として20万使用する予定である。従って、次年度の見積もりは、物品費が計146万円、旅費が計20万円、謝金・その他で計20万円、合計186万円(本年度持ち越し含む)となる。
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Research Products
(4 results)