2011 Fiscal Year Research-status Report
炎症に伴うリンパ節構造のリモデリングによる抗体産生応答制御機構の解析
Project/Area Number |
23790525
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 淳 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50581831)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | リンパ節 / 間質ネットワーク / リモデリング / 抗体産生 |
Research Abstract |
1. リンパ節髄質領域のremodelingによって形成される「足場」の分子構成の同定免疫蛍光組織染色による解析を行った結果、リンパ節髄質領域における間質ネットワーク構成は、傍皮質領域と類似していることが明らかとなった。そのため、remodelingによって髄質領域に形成される「足場」の分子実態を捉えるためには、網羅的な分子発現検索が必要であると考えられた。その足掛かりとして髄質領域に存在する間質ネットワーク構成細胞を同定しうるフローサイトメトリーにより表面分子抗原の探索を行ったところ、細胞線維芽細胞の中で2つのサブセットを分離しうる抗原が見出された。この抗原に対して免疫蛍光染色を行ったところ、髄質実質領域で選択的に発現が認められなかったことから、髄質領域の間質細胞を同定する細胞表面分子マーカー候補が得られたと考えられる。2. リンパ節髄質領域remodelingの抑制による抗体産生応答への影響Lymphotoxin-b受容体Fc融合タンパクの投与により髄質領域のremodelingを阻害することで、抗原特異的なT細胞依存的抗体産生応答が抑制されることが明らかとなった。さらに、B細胞欠損マウスに大量の抗原非特異的B細胞と少量の抗原特異的B細胞を分けて養子移入したところ、抗原非特異的B細胞の移入のみでremodelingが回復すること、少量の抗原特異的B細胞のみではremodelingが回復しないこと、またremodelingが回復した条件下でのみCD4陽性T細胞応答の回復を伴わずに抗体産生応答の回復が認められることを見出した(注: B細胞欠損マウスでは、B細胞応答で中心的役割を果たす濾胞ヘルパーT細胞応答が減弱化する)。したがって、髄質領域のremodelingは抗体産生応答と密接な関係を持つ現象であることが示唆される。なお、本実績は論文として発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. リンパ節髄質領域の remodelingによって形成される「足場」の分子構成の同定当初計画では、とくに細胞外マトリックス構成分子とその受容体に焦点を当てた解析を行うことで、remodelingによって形成される抗体産生応答の「足場」を構成する分子の同定を目指したが、その構成に他のリンパ節領域(とくに傍皮質領域)との間に大きな差異は認めることができなかった。一方で、より詳細な解析を行うために必要となる細胞の分画に使用しうるマーカー分子の候補を見出すことには成功しており、別アプローチによって当初よりもさらに詳細な形で目的を達成しうる可能性が見えている。アプローチの変更こそあったものの、その基礎となるデータは既に得られていることから、本計画はおおむね当初の予定通りのスケジュールで進行していると考えられる。2.リンパ節髄質領域 remodelingの抑制による抗体産生応答への影響当初計画の通り、リンパ節髄質領域のremodelingと抗体産生応答の関係性について、2つの実験条件下での検証を行った。その結果、いずれの実験においてもremodelingの消長が他の現象(CD4陽性T細胞応答、リンパ球のリンパ節への動員など)とは独立して抗体産生応答の強度と密に相関するという知見を得た。今後の解析によってそのメカニズムを解明することで本研究の目的を達成しうることから、当初の計画通りに研究が進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
正常状態と免疫応答時(remodelingが誘導される条件下)での網羅的遺伝子発現解析、ならびにその比較を行うことで、remodelingに伴って間質細胞において発現の変動する遺伝子を同定する。ここで同定された遺伝子群については、タンパクの組織内局在を免疫蛍光組織染色によって明らかにするとともに、remodelingの阻害/回復との相関性、抗体産生応答との関連性について検討を行う。また、免疫応答における生理的意義という観点に基づき、抗体産生細胞をはじめとする免疫担当細胞と同定した遺伝子によってコードされるタンパクの相互作用(共局在性)について解析を行う。とくにremodelingの原因ではなく結果として変動すると考えられる細胞外マトリックスタンパクをコードする遺伝子群に着目することで、remodelingによって形成される「足場」についてリンパ節構築・微小環境の観点から新たな知見を得ることを目指す。最終的に、同定した分子を発現量、remodeling・抗体産生応答との相関性、抗体産生細胞/免疫担当細胞との共局在性という観点からさらに絞り込み、抗体や薬剤ないしは遺伝子改変マウスを用いた解析により、remodeling誘導後のリンパ節構築の変化(新たな「足場」の形成)が抗体産生応答に果たす意義の解明を目的として研究を進展させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究推進方策に則り、次年度は (1) リンパ節間質細胞の次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析(申請者の所属教室出身である橋本真一 特任教授(金沢大学)の協力のもと行う)、(2) 発現解析の結果に基づいた髄質領域間質細胞およびremodeling後の髄質領域に特異的なマーカー・「足場」構成因子の同定、(3) 野生型ないし遺伝子改変マウスを用いたin vivoでのリンパ節髄質領域remodelingの評価・抗体産生応答・リンパ節構築の解析、(4) 遺伝子発現解析等により同定された分子に対する機能阻害薬・抗体等を用いたremodeling・抗体産生応答・リンパ節構築の解析を行う。そのために必要となる分子生物学・細胞生物学実験用試薬、フローサイトメトリー・免疫蛍光組織染色用試薬/抗体、各種プラスチック消耗品、ならびに実験動物(Jackson laboratoriesなどにより販売されている遺伝子改変マウスを含む)を購入する。また研究成果の発表を目的として国内外の学会・研究会・シンポジウムへ参加することを予定しており、その出張費用も計上する予定である。
|