2012 Fiscal Year Research-status Report
形質細胞様樹状細胞のエンドソーム時空間的制御に関与する新規分子の網羅的探索と同定
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23790535
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北脇 年雄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50378684)
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Keywords | 形質細胞様樹状細胞 / I型インターフェロン / IRF7 / 二重レポーターシステム / レトロウイルス挿入変異 |
Research Abstract |
形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell: pDC)は病原体由来の核酸に迅速に反応して大量のI型インターフェロン(interferon: IFN)を産生する一方で,自己細胞由来の核酸に異常に反応してI型IFNを産生し,全身性エリテマトーデスや尋常性乾癬などの自己免疫疾患の病態形成に関与する. pDCの核酸受容体であるToll様受容体9(Toll-like receptor 9: TLR9)の下流には,IRF7経路とNF-κB経路の異なる2つのシグナル経路が存在し,IRF7経路が活性化した場合にはI型IFNが産生され,NF-κB経路が活性化した場合は炎症性サイトカインの産生,共刺激分子の発現増強が誘導される.これらのうち,生体防御・臨床病態への関わりからするとI型IFN産生につながるIRF7経路の活性化が注目される. 本研究計画においては,pDCのIRF7経路の活性化に特異的に関わる分子を網羅的に探索し,同定することを目的に,我々が独自に樹立したヒト芽球性pDC腫瘍由来の細胞株に,2つの異なる蛍光蛋白(EGFPおよびDsRed)をレポーター遺伝子とするNF-κBおよびIRF7のレポーターシステムを二重に導入し,レトロウイルス挿入変異により遺伝子変異を導入したのち,TLR9シグナル経路の活性化様式の異なるクローンをレポーター遺伝子の発現の差を指標にセルソーターにて分離し,各クローンの遺伝子変異を解析することによってpDCのI型IFN産生に必須である分子を同定することを計画している. 平成24年度は,EGFPをレポーター遺伝子とするNF-κBレポーターシステムをヒトpDC細胞株に安定導入することに成功し,現在,DsRedをレポーター遺伝子とするIRF7レポーターシステムの作製を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒトpDC細胞株への導入を目的としている二重レポーターシステムのうち,これまで,NF-κBのレポーターシステムは作製に成功し,さらに,これを安定発現するヒトpDC細胞株の樹立が完了している.次に,このヒトpDC細胞株にIRF7のレポーターシステムを安定導入する予定で,現在,IRF7のレポーターシステムの作製に取り組んでいる.I型IFNの発現誘導に関わる転写因子にはIRF3とIRF7の2つがあり,両転写因子の結合配列には相同性がある.我々はIRF7に特異性が高いレポーターシステムを作製するため,IRF3では活性化されず,IRF7のみよって活性化されると報告されているIFN-A7遺伝子のプロモーター領域(Mol Cell Biol 20:6342, 2000)をクローニングし,DsRedの発現ベクターに組み込んだ.しかし,この発現ベクターを活性化IRF7の存在下に遺伝子導入してもDsRedが発現せず,IFN-A7遺伝子のプロモーター領域に加え,他のエンハンサーなどを加える必要が考えられる.現在,エンハンサーを加えたIRF7レポーターシステムを作製し,その機能を検証しているところである.このようにIRF7レポーターシステムの作製について試行錯誤を繰り返している状態であり,その段階で計画が足踏みをし,研究計画の遂行に遅延を生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは本研究計画の推進に必須となるIRF7レポーターシステムを可及的速やかに何とか作製する.現在試みているエンハンサーの追加にても,DsRedの誘導が起こらない場合は,IFN-A7遺伝子のプロモーター領域をタンデムに繰り返し配列することにより,プロモーター活性の増強を試みる.それでもうまくいかない場合は,IFN-A7プロモーター以外のプロモーター(ISG54など)の使用を検討する. また,当初の計画ではレトロウイルス挿入変異による変異クローンの作製と,変異遺伝子の解析を予定していた.時間的余裕があればこの解析方法を行うが,時間的余裕がない場合,変異クローンの遺伝子発現マイクロアレイ解析とパスウエイ解析の組み合わせにより,変異クローンで障害されているシグナルパスウエイを同定する方法に切り替えることを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究の推進の方策に示すように,次年度は,IRF7レポーターシステムの作製,レトロウイルス挿入変異による変異株の作製,変異遺伝子の同定(場合によっては,マイクロアレイ解析とパスウエイ解析)を行う.そのため,研究費を分子生物学用試薬,細胞培養試薬,遺伝子解析試薬の購入に使用する予定である.
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