2012 Fiscal Year Research-status Report
疼痛における生体膜糖脂質の機能と鎮痛への応用のための基礎的研究
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23790647
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
渡辺 俊 東北薬科大学, 薬学部, ポストドクター (50415337)
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / 疼痛 / 糖鎖 / 神経科学 |
Research Abstract |
現在までに、研究代表者らは糖脂質が疼痛や疼痛過敏を引き起こし、そのメカニズムとして糖脂質が皮下においてグルタミン酸の放出を促進することを見いだしている。さらに、動物実験以外からこの糖脂質によるグルタミン酸放出促進の分子メカニズムの解明に向けたアプローチとして、株化細胞を用いた検討を行った。株化細胞としては神経系由来の細胞であるNeuro2aを分化させたものを用い、糖脂質を培養液中に投与し、培養液中のグルタミン酸濃度をHPLCにより測定した。その結果、糖脂質の一種ガングリオシドを投与することで培養液中のグルタミン酸濃度が上昇することを見出した。以上を成果としてNeuroscience letters誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子メカニズムを解明しうる実験系が得られたので、以降はこの実験系を用いて糖脂質によるグルタミン酸放出能制御のメカニズムを検討し、得られた成果をマウスの疼痛実験に反映させていくことが期待される。一方で、疼痛モデルを用いた検討を今後推し進める必要がある。特に、従来の鎮痛剤が効きづらいことからも注目されている神経障害性疼痛については、ガングリオシドや、その生合成経路に関係している試薬を検討していくことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たな鎮痛薬が求められている慢性疼痛に対して糖脂質が影響を及ぼすか解析を行う必要がある。具体的には、神経因性疼痛や炎症性疼痛のモデルを作製し、ガングリオシドなどの糖脂質や生合成系に関与する試薬により疼痛が影響を受けるか検討を行う。併せて、培養細胞を用い、糖脂質が制御しうるグルタミン酸分泌機構の検討を行う。 なお、研究代表者の異動に伴い研究環境の変化があったので、必要に応じて研究機器を購入し、グルタミン酸や脂質解析などの測定系をセットアップする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、マウスモデルを用いた疼痛実験の実施のために必要なマウス購入費、必要な試薬類の購入のために使用する。また、グルタミン酸分泌促進の実験系を用いた分子メカニズム解明のために必要な阻害剤、プラスミド、培養用品などの購入のために使用する。その他、タンパク質解析、脂質解析、遺伝子組み換え実験、細胞機能解析のために必要な器具、試薬、酵素類、抗体等に使用する。さらに必要に応じてグルタミン酸分析や、脂質解析に必要な装置などを準備する。
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