2012 Fiscal Year Annual Research Report
ABCトランスポーターABCG2の心血管病における生理的役割の解明
Project/Area Number |
23790836
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東邦 康智 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10586481)
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Keywords | 心肥大 / 血管内皮細胞 / 酸化ストレス / 膜輸送蛋白 / グルタチオン / 動脈硬化 |
Research Abstract |
心疾患におけるABCトランスポーターABCG2の役割について、マウスの圧負荷心肥大モデルを用いて検討を行った。まず、免疫組織染色にてABCG2が主に心臓の微小血管内皮細胞に発現していることを確認した。野生型マウス及びABCG2ノックアウトマウス(KOマウス)に圧負荷心肥大を誘導すると、KOマウスでは心肥大及び心リモデリングの増悪を認めた他、圧負荷後早期の心組織における酸化ストレスの増悪を認めた。次に抗酸化剤をマウスに投与した上で圧負荷心肥大を誘導すると、KOマウスにおける心筋細胞肥大及び心線維化は野生型マウスと同等にまで改善した。圧負荷後の酸化ストレス産生系及び応答系の評価を行うと、KOマウスでは酸化ストレス応答系が障害されていた。実際、ABCG2は微小血管内皮細胞からの内因性抗酸化物質であるグルタチオンの輸送を制御していることが分かった。以上から、心臓における酸化ストレス応答には微小血管内皮細胞が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。そして、その機能を制御しているABCG2が心肥大の新たな治療標的となりうることが示唆された。 また、血管病におけるABCG2の役割について、マウスの下肢虚血モデル、ワイヤー障害モデル、カフ留置モデルを用いて検討を行った。マウスの下肢虚血モデルでは、血管新生において野生型マウスとKOマウスとの間に差を認めなかった。しかし、ワイヤー障害モデルやカフ留置モデルでは、野生型マウスと比較してKOマウスで動脈硬化が抑制された。その機序に関しては、ABCG2が動脈壁に存在する組織幹細胞の機能を制御している可能性を示唆する結果を得た。今後、その詳細な機序や病態生理における役割の解明が必要である。 以上の結果から、ABCG2は心臓及び血管における病的刺激に対する応答に重要な役割を果たしており、心血管病の病態生理に深く関与していることが明らかとなった。
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