2011 Fiscal Year Research-status Report
若年性パーキンソン病原因遺伝子産物がミトコンドリアを維持する分子メカニズムの解析
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23790973
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今居 譲 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30321730)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | PINK1 / Parkin / ショウジョウバエ / ドーパミン神経 / 脳神経疾患 / ミトコンドリア / Miro / 神経軸索輸送 |
Research Abstract |
若年性パーキンソン病原因遺伝子PINK1、parkinの機能喪失が神経変性を導く病理メカニズムを解明することを研究の大目的とする。ショウジョウバエにおいてPINK1、parkinの機能喪失は、ミトコンドリアの変性を導く。すなわち、PINK1、parkinが、ミトコンドリアの機能維持に関与することが示唆されている。我々は、PINK1とParkinが同一のシグナル伝達で働くことをショウジョウバエ遺伝学にて見出していたが、両分子がミトコンドリアの機能を制御するメカニズムの詳細は明らかとなっていない。 本研究では、ショウジョウバエの遺伝学的スクリーニングにより、PINK1ノックダウンに起因するミトコンドリア変性を抑制する遺伝子をスクリーニングした。その結果、ミトコンドリアの順行輸送に関与するミトコンドリア膜上タンパク質Miroを同定した。Miroの発現を抑制するとPINK1ノックダウンショウジョウバエのミトコンドリアの変性が抑制された。Miroの発現抑制、PINK1の過剰発現は共に、神経細胞のミトコンドリアの軸索輸送を抑制し、一方Miroの過剰発現、PINK1の発現抑制は輸送を促進した。培養細胞を用いた分子レベルの解析において、膜電位の低下したミトコンドリア上のMiroがPINK1, Parkin依存的に分解されることが明らかとなった。 以上の結果から、PINK1, Parkinは膜電位の低下した(不良)ミトコンドリアを神経終末へ輸送させない巧妙なメカニズムに関与していることが考えられた。不良ミトコンドリアの神経終末への集積は、神経終末においてのエネルギー不足、活性酸素種の発生の原因となり、ひいては神経変性の一因となると考えられる。本研究の意義は、PINK1-Parkin-Miro経路の同定とその調節によって神経変性を抑制できる可能性を示した点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PINK1-Parkin経路がミトコンドリアの機能維持に関与する新規分子メカニズムを明らかにし論文として発表することができた。本成果は日経産業新聞に掲載された。おおむね研究計画を達成したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、PINK1結合タンパク質であり、PINK1経路に関与する分子PGAM5の解析、PINK1の安定性を制御するユビキチンリガーゼMuleの機能解析に関して進める。ショウジョウバエを用いた機能解析と培養細胞を用いた分子細胞生物学的、生化学的解析を組み合わせ、PGAM5とMuleのPINK1経路においての機能の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き、ショウジョウバエの分子遺伝学的解析、培養細胞を用いた分子細胞生物学的、生化学的解析を進める。その解析に使用する試薬、成果を発表する旅費、技術補佐員への謝金、通信運搬費、論文掲載費などに使用する予定である。
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