2012 Fiscal Year Research-status Report
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来新型株出現機構に関する基礎研究
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23791134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 洋平 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50452462)
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Keywords | エジプト |
Research Abstract |
当該年度は、まずエジプトで流行する高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型(以下、H5N1ウイルス)の抗原性の多様化に着目し、リバースジェネティクス法を用いて抗原性変異に寄与するHemagglutininのアミノ酸変異を決定した。その結果、現在エジプトで同時流行している複数のsublineage virusの抗原性が交差しなくなっていることが明らかとなった。このことは、単一抗原ワクチンを用いたワクチネーションを根幹とする防疫対策の困難さを示唆するものであり、より複合的な防疫対策の施策がエジプトでは必要であることを示している(Watanabe Y, et al J. Gen. Virol. 2012)。 次に、共同研究者のMadiha S Ibrahim博士をエジプトから日本に招へいし、現地でのH5N1ウイルス蔓延状況や病原性変化について現状把握と意見交換をおこなった。これらの議論を踏まえた上で、地域の実状に即したウイルス感染制御の施策についての総説をNature Publishing Groupに発表した。当該総説は、EMBO Rep.に掲載され、February 2013 IssueにおいてHighlightsの1つに選出された(Watanabe Y, et al EMBO Rep. 2013)。 さらに現在、リバースジェネティクス法によって、エジプトにおけるH5N1ウイルス感染患者において検出されたアミノ酸変異を導入した組替えH5N1ウイルスを作出し、その病原性に対する影響を評価している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、エジプトで流行する高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型(以下、H5N1ウイルス)で確認されるアミノ酸変異のうち、より複合的にウイルス進化動態を調査するために抗原性に着目し、その多様化を明らかにすることができた。また、これまでのエジプトにおけるH5N1ウイルスの多様化を捉えたうえで、H5N1ウイルスの制御についての総説を発表した。 現在、H5N1ウイルスの細胞吸着・侵入過程に影響を及ぼす可能性があるhemagglutininに検出されるアミノ酸変異を順次導入することで、ヒトへの感染性に影響する可能性がある変異を明らかにしつつある。 そのため、エジプトで流行するH5N1ウイルスからヒトにより感染性を獲得する新型株出現が出現する潜在性について順調に解析できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中である、エジプトにおいてH5N1ウイルス患者内で確認されたウイルス遺伝子変異のヒト感染性への影響評価を今年度中に取りまとめられれば、現地での新型株出現の潜在性および出現機構の一旦を解明できるものと考えている。 また、今年度は、当該研究の最終年度であるが、継続的にエジプトにおけるH5N1ウイルスの進化動態を把握するため、農林水産大臣の許可の下で、エジプトから日本へのH5N1ウイルスサンプルの移送を計画している。これらのサンプルについても遺伝子解析およびウイルス性状解析を実施し、現地でのウイルス進化状況をリアルタイムで捉える予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子変異のヒト感染性に与える影響を評価するために、変異導入組み換えウイルス作出に必要な試薬類およびヒト呼吸器組織切片や初代呼吸器上皮細胞の購入を主に計画している。その他は、シークエンス費用と国内共同研究者との協議のために国内出張の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)