2014 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来新型株出現機構に関する基礎研究
Project/Area Number |
23791134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 洋平 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50452462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際感染症 / インフルエンザ / 鳥インフルエンザウイルス / 人獣共同感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスは、エジプトを含むアジア・中近東地域の一部で鳥類における感染流行域を獲得している。繰り返される感染伝播によって変異が誘導され、H5N1ウイルス由来新型パンデミックが発生する可能性が指摘されている。本研究の目的は、エジプトにおいて蔓延するH5N1ウイルスの中からヒトに高い感染性を獲得したウイルス株を先見的に探索し、その進化動態を把握することである。 最終年度の目標は、これまでに同定したウイルスHA変異がその増殖性に与える影響を論文として取りまとめることであった。まず、変異導入組み換えウイルスを作出し、ウイルスの初代ヒト呼吸器上皮細胞への吸着性をFACS解析により定量化した。その結果、変異導入によってH5N1ウイルスがヒト呼吸器上皮表面への結合性を高めることが明らかとなった。その後、本研究期間を通じて得られた知見を論文として取りまとめて、科学雑誌に投稿した。当該論文は現在、査読を受けている段階である。 研究期間を通じては主に以下の点が明らかとなった。 1)近年ヒトから分離されたウイルス株の全てが特定のsublineageに属していることを示し、共通するアミノ酸変異を決定した。変異HA組み換えウイルスを作出し、アミノ酸変異が糖鎖親和性に与える影響を評価したところ、当該変異の一部がヒト型糖鎖親和性獲得に寄与することが明らかとなった。これらの結果は、鳥類でH5N1ウイルスが伝播する過程において、ヒト型糖鎖親和性を獲得する変異ウイルスが出現しうることを示している。 2)H5N1ウイルスが感染アヒル固体内において、遺伝子多様性を獲得しうることを明らかにすると同時に、エジプトでは抗原性が異なる複数のsublineageが同時流行していることを報告した。これらは、当該地域における急速なウイルス進化動態を示唆しており、H5N1ウイルスに対する公衆衛生に重要な情報を提起した。
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Research Products
(3 results)