2011 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症モデルマウスを用いた新規心奇形原因遺伝子の同定
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23791194
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮本 憲一 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (00424185)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ダウン症 / 心奇形 / ノックアウトマウス / Zfp295 |
Research Abstract |
本研究では、ダウン症に見られる数ある症状の中から患者の40~50%と比較的高い頻度で見られる心奇形に焦点を絞り、発症の原因となっている遺伝子を同定し、その発症メカニズムを明らかにすることを目指した。そのために、それまでの心奇形発症が認められたダウン症部分トリソミー患者およびダウン症モデルマウスの報告を基に、ダウン症心奇形の原因遺伝子を含む可能性が最も高いと考えられる領域をダウン症先天性心奇形最小候補領域 DS-CHD MCR(Down syndrome-congenital heart disease minimum candidate region)と名付け、そこに含まれる約10個のタンパク質をコードする遺伝子の中からさらに有力と思われる遺伝子、Zfp295(Zinc finger protein 295)を選択し、IKMC(International Knockout Mouse Consortium)からノックアウトES細胞を入手した。その細胞を用いて昨年度にキメラマウスの作製を行い、個体の毛色から高寄与率と思われる個体について交配、繁殖を試みたが変異アレルを有する個体を得ることができなかった。そこで、それら個体の精巣上体尾部を摘出し、体外受精を行ったところES細胞由来の仔マウスが得られたが、ヘテロノックアウトマウスは得られなかった。同時に、その精子より抽出したゲノムDNAを用いたPCRから変異アレル由来の増幅産物が検出された。以上のことから、キメラマウス作製に用いたZfp295ノックアウトES細胞は、germline transmission能力を有する細胞であることが確かめられた。したがって、本年度は再度同様の方法でキメラマウス作製を試みた。その結果、高寄与率と思われる個体が得られたため、現在自然交配による繁殖を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、これまでの心奇形を発症したダウン症部分トリソミー患者群から絞られた心奇形原因候補遺伝子のノックアウトマウスを作製し、心奇形を発症する既存のダウン症モデルマウスとの交配により対象遺伝子のみを正常のダイソミーに戻した上で心奇形発症頻度を精査し、対象遺伝子と心奇形発症との関連を解明することが目的である。したがって、ノックアウトマウスの作製は本研究での重要な起点である。しかしながら、これまでZfp295ノックアウトマウスの作製に取り組んだ結果、高寄与率と考えられる個体が得られるものの、変異アレルを有するF1世代の個体が得られていないことから今後の対策が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、Zfp295ノックアウトマウスの作製については、現在飼育しているキメラマウスを用いた体外受精による個体作出を考えている。また、本研究の対象領域からは外れてしまっているが、以前に入手したTryptophan-rich basic protein (Wrb)ノックアウトES細胞を用いてのマウス作製も行う。その理由として、Wrb遺伝子は酵母Get1遺伝子のオルソログ遺伝子であり、小胞体などの脂質二重膜に局在する膜タンパクであることが最近報告された。また、Wrbタンパクが関与していると考えられるpost-translational pathwayは膜生合成やアポトーシス、小胞輸送などさまざまな役割を担っていると言われており、ヒトでも心臓、脳などで発現していることが知られている。このようにWrbタンパクは細胞の生命活動の基礎的な部分での役割を担っていることが考えられ、Wrbタンパクの高発現がダウン症の病態にも関与していることが予想される。したがって、Wrbノックアウトマウスを作製し得られた表現型がもたらす知見の意義は大きい。一方で、ヒト人工染色体(HAC)ベクターを用いたトランスジェニックマウスの作製を検討している。HACはヒト21番染色体セントロメアを有するエピソームベクターであり、同ベクターを用いて目的遺伝子をBACクローン単位でマウスに導入することで対象遺伝子の直接的な遺伝子量効果を観察することが出来る。このマウス作製系はすでに確立されており、すでに先行研究も行っている。また同時に本研究における目的遺伝子を含むBACクローンも入手しているので、この系を用いてダウン症心奇形原因候補遺伝子における遺伝子量効果の解析にも十分応用可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、Zfp295およびWrbノックアウトマウスの作製を行うための採卵、胚移植を行う為のマウスと出生したマウスとの交配用マウスを購入する為、そして現在それらのマウスは所属研究機関の動物飼育施設にて維持されているため、その飼育費として用いる。また、それらマウスの表現型解析および既存のダウン症モデルマウスを入手する為の費用として用いる。尚、昨年度に生じた繰り越し額は効率的な物品調達を行った結果生じたものであり、次年度の消耗品費として使用する。
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