2011 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群精神遅滞の関連候補遺伝子のマウスモデルにおける解析
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23791203
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 裕 独立行政法人理化学研究所, 神経遺伝研究チーム, 研究員 (10511678)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ダウン症候群 |
Research Abstract |
ヒト21番染色体は、その大部分がマウス16番染色体上の一部領域と相同である。その相同領域内のsod1からznf295まで約81個の遺伝子を含む領域がトリソミーであるTs1Cjeマウスと、cbr3からc21orf11まで約33個の遺伝子を含む領域がトリソミーであるTs1Rhrマウスは、ダウン症候群マウスモデルとして広く利用されている。申請者が、ダウン症精神遅滞を惹き起こす候補遺伝子の一つとして考えているpep-19遺伝子は、Ts1Rhrトリソミー領域(及びTs1Cjeトリソミー領域)に含まれている。Ts1Cjeマウス(或はTs1Rhrマウス)とpep-19へテロマウスを交配するのに先立ち。Ts1Cjeマウス及びTs1Rhrマウスに体重の変化が認められるかどうかを検討した。その結果、正常マウスと比較して、生後3ヶ月において、Ts1Cjeマウスは体重低下が認められるのに対し、Ts1Rhrマウスでは変化は認められなかった。現在、MRI装置を用いて、脳の形状、脳室の大きさを評価している。また、神経発生異常の観点から、Ts1Cjeマウス、Ts1Rhrマウスにおいて、免疫組織学的検討から、interneuron数、海馬、線条体、皮質におけるoligodendrocyteの数が正常マウスに比べて統計的な有意差が認められない事がわかった。Ts1Cjeマウス、Ts1Rhrマウスについて、トリソミー領域内のpep-19遺伝子のみを2倍体に戻すことにより、精神遅滞症状が改善するかどうかを行動解析を用いて調べるに先立ち、Ts1Cjeマウス、Ts1Rhrマウスにおいて、Y-maze test, Open filed test, Object recognition test, 3 chamber test等を行い、トリソミー領域の行動学的異常に及ぼす影響を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動解析は、計画通りに進んでいるが、分子生物学的解析に関しては少し遅れている。理由としては、同条件で解析に必要十分な個体数を一度にそろえることが困難であり、行動解析に使用した個体を分子生物学的解析に使用できないことが挙げられる。従って、継続的に実験を繰り返し、データを蓄積していく必要がある。場合によっては体外受精などにより、一度に多数の個体を得る方法をとる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ts1Rhrトリソミー領域は、Ts1Cjeトリソミー領域の一部である。よって、解剖学的解析、分子生物学的解析および行動解析において、Ts1Cjeマウスで正常マウスと差が認められなかったパラメーターに関して、Ts1Rhrマウスと正常マウス間で差が出る可能性は非常に低いと考えられる。即ちTs1Rhr領域内に含まれるpep-19遺伝子が関与している可能性も非常に低いと考えられる。 まず、Ts1Cjeマウスにおいて、正常マウスと差が認められるパラメーターのみ、Ts1Rhrマウスにおいて検討して、Ts1Rhrマウスと正常マウス間で差が認められた場合ののみ、Ts1Rhrマウスとpep-19へテロマウスを交配して、pep-19遺伝子のみを3倍体から2倍体に戻すことにより、改善傾向が認められるかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度の部分で記述したが、行動解析は、計画通りに進んでいるが、分子生物学的解析に関しては少し遅れている。よって、H23年度未使用分が生じてしまった。H23年度未使用分とH24年度研究費を合わせて、実験に多数の個体を使用できるよう、体外受精をするなどの工夫をしながら、初年度に引き続き、当該年度においても行動解析およびMRI解析のデータの蓄積を行う。本研究課題の他の解析とは異なり、生存している状態の個体を用いているため、同条件で解析に必要十分な個体数を一度にそろえることが困難である。従って、継続的に実験を繰り返し、データを蓄積していく必要がある。過酸化ストレスのマーカーである13-HPODE、4-HNEを認識する抗体を用いて、lipide peroxidationについて、Ts1Cjeマウス及びTs1Rhrマウス、pep-19のみを2倍体に戻したTs1Rhにおいて変化の有無を検討する。また、神経変性変化について、tau蛋白のリン酸化、及びリン酸化に関わる因子であるGSK3β、JNK/SAPKの活性化について検討する。Doublecortin陽性のneuroblastの数、Ki-67,BrdU染色による細胞増殖率を評価することで、neurogenesisの変化について検討する。TUNEL法により、アポトーシスの変化についても検討する。
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