2012 Fiscal Year Annual Research Report
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた培養系精神疾患モデルの確立
Project/Area Number |
23791349
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
鳥塚 通弘 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20588529)
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Keywords | 統合失調症 / iPS細胞 / 抗精神病薬 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
統合失調症は人口の約1%を占める主要な精神疾患であるにも関わらず、未だ根治術は無く、患者やその家族のみならず社会にとっても大きな損失となっている。疾患の病態生理が未解明であるために本質的には対処療法しか行えないことがその主因であるが、病態が解明されない理由の一つに、脳の生検は人道的見地から行えず、細胞生物学的な解析が不可能であることが挙げられる。しかし、山中研究室から報告されたiPS細胞の技術を用いることで、患者由来の中枢神経系細胞を作成することが原理的に可能となり、この問題を解決する可能性が示された。iPS細胞から誘導した中枢神経系細胞を培養系精神疾患モデルとして用い、統合失調症の発症に至る生化学的・細胞生物学的基盤を解明し、またこの培養系モデルを用いて抗精神病薬の評価系を確立することが本研究の目的である。 対象は本研究に同意能力があり同意を得た統合失調症患者、および本研究の趣旨に賛同する健常対照者であり、これまでに11名の統合失調症患者および12名の健常対照者から同意を得た。同意を得た全例の上腕内側部から皮膚生検を行い、皮膚線維芽細胞を培養し、保存した。このうち4名の線維芽細胞を基に、山中研究室から報告のあるエピソーマルプラスミドベクターを用いた方法でiPS細胞を樹立し、保存した。作成したiPS細胞のうち、患者・健常者各1名のサンプルを用いて、神経細胞への分化誘導を行った。分化誘導前のiPS細胞の多能性細胞マーカーの発現や、神経幹細胞への分化誘導性に差は認めなかった。いずれのサンプルから誘導したニューロンも、数カ月の培養の後に電気生理学的解析を行うと、活動電位を連発する成熟したニューロンが得られた。
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