2012 Fiscal Year Research-status Report
ボルツマン方程式を用いた放射線治療用吸収線量計算法・治療計画システムの開発
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23791449
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
杉本 聡 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00373316)
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Keywords | ボルツマン方程式 / モンテカルロ法 / 線量計算 / 小照射野 / 電子線 / 不確実性 / VMAT / 最適化 |
Research Abstract |
本研究課題ではボルツマン方程式を用いた放射線治療用吸収線量計算法・治療計画システムの開発を目指している。当初の計画ではボルツマン方程式を直接解く方法を用いた線量計算法を開発することを第一の目的としていたが、ボルツマン方程式を直接解く方法を用いたアルゴリズムを搭載した商用の放射線治療計画装置が出てきたこともあり、本年度はボルツマン方程式を直接解く方法では精度の高い計算を行うことが難しいと考えられる場合について、モンテカルロ法を用いて評価を行った。 小照射野の電子線ビームの質量制限阻止能比をモンテカルロ計算を用いて評価を行った。ボルツマン方程式を直接解く方法を用いて電子線ビームの吸収線量計算を正確に行うことは現在のところ難しい。小照射野の場合、横方向の散乱線の影響が通常の大きさの照射野の場合と比べて変化し、それに伴って質量制限阻止能比が通常の照射野と比較して変化する。質量制限阻止能比は電離箱による測定から吸収線量を求める際に必要になる。モンテカルロ計算を用いて評価することにより、その変化は治療で重要な領域において約1%程度であることが分かった。 治療計画システムの開発に関しては、連続回転型強度変調放射線治療の治療計画における線量分布の不確実性の評価を行った。現在の治療計画装置においては治療計画自体の不確実性の評価は行われていないが、できる限り不確実性の少ない堅牢な治療計画を作成することが望ましい。前立腺癌の治療の場合の評価を行いリスク臓器である直腸とターゲットである前立腺の境界領域に線量の不確実性の高い領域が現れることが分かった。不確実性の大きさを評価することにより、線量分布の不確実性を考慮した治療計画の最適化が可能となり、様々な誤差要因に影響されにくい確実性の高い治療計画を作成できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ボルツマン方程式を直接解く方法の定式化、コーディングに予想以上に時間がかかったことが研究の遅れの第一の原因である。ボルツマン方程式を直接解く場合、人体に含まれる様々な物質に対する電子、光子の散乱断面積を計算に用いる必要がある。そのため、ボルツマン方程式を直接解く方法では現在の治療計画装置に用いられている線量計算アルゴリズムに比べて必要なデータ量が大きくなる。また、線量計算アルゴリズム自体も複雑になる。それらの困難の処理に時間がかかり、現在までに線量計算コードの作成が完了していないところが、計画の遅れにつながっている。 治療計画システムの開発においては、これまでの治療計画装置にはない特色を追加するのに時間がかかっている。強度変調放射線治療、連続回転型強度変調放射線治療においては様々な線量制約を満たすために最適化問題を解かなくてはならない。我々は最適化の際に線量の不確実性をできる限り減らすことによって、堅牢な治療計画を作成する方法の開発に取り組んでいる。通常の強度変調放射線治療の場合は線量の不確実性に関するモデルがすでにいくつか提案されているが、連続回転型強度変調放射線治療におけるモデルはまだ確立されていない。その定式化に時間を要したことも計画が遅れた原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
線量計算アルゴリズムの開発に関しては引き続きボルツマン方程式を直接解く方法のコーディングを進める。今年度中の完成を目指す。 治療計画システムに関しては、強度変調放射線治療、連続回転型強度変調放射線治療の最適化の部分を中心に研究を進めて行く。特にこれらの治療計画における線量分布の不確実性の最小化を目指した最適化法の開発を進める。最適化の際に用いる線量計算アルゴリズムに関しては当初の予定ではボルツマン方程式を直接解く方法を想定していたが、計算時間の短縮が難しいことが予想されるため、高速な計算方法を取り入れる予定である。 動体追尾照射に対応できるように4次元線量計算を行うことができる線量計算システムを開発する。適応放射線治療に対応できるように治療コースを通した変化も追跡することが可能なシステムを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
治療計画システム用計算機 200,000円 コンパイラ、画像処理・線量計算解析ソフトウェア 200,000円 海外出張(成果発表) 400,000円、国内出張(成果発表・研究打合せ) 200,000円 論文作成費用(投稿料・校正) 50,000円、研究情報提供謝金 50,000円、消耗品(ハードディスク等)・書籍 55,599円
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Research Products
(15 results)