2012 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植のレシピエントにおけるドナー特異的抗体と拒絶反応に関する研究
Project/Area Number |
23791520
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
脇 嘉代 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70505891)
|
Keywords | 肝移植 / 抗HLA抗体 / 拒絶反応 / 免疫抑制剤 |
Research Abstract |
免疫抑制療法の進歩により、移植後1年以内に急性拒絶反応からグラフト不全を起こす頻度は著しく減少し肝臓移植予後の改善に大きく貢献した。一方で、肝臓移植の長期成績は殆ど改善しておらず、移植後の原疾患の再発が問題となっている。C型肝炎など、原疾患によっては免疫抑制剤の投与が原疾患の再発のリスクを高める場合もある。従って、免疫抑制剤の長期投与によって引き起こされる弊害と免疫抑制剤の減量による拒絶反応のリスク、原疾患の再発を見極めながら免疫抑制剤の投与量を調整することは重要な課題である。本研究では肝移植における抗HLA抗体と拒絶反応、免疫抑制剤の減量との関連性について検討した。その結果、移植後に急性拒絶反応を発症した症例では、急性拒絶反応を発症しなかった疾患に比べて抗HLA抗体、中でも、ドナー特異的抗体の陽性率が高いことが明らかになった。更に、肝臓移植前と肝臓移植後早期の抗HLA抗体の有無を調べたところ、拒絶反応のリスクが低い症例では、移植前と移植後早期から抗HLA抗体が陰性である傾向が認められた。また、拒絶反応のリスクが高い症例では、移植前と移植後早期から抗HLA抗体が陽性であり、抗体価も高い傾向が認められた。移植前と移植後早期の抗HLA抗体が陰性、もしくは抗HLAの抗体価が低い症例では、抗HLA抗体が陽性の症例に比較して、免疫抑制剤を減量できる可能性が高かった。抗HLA抗体の有無のみならず、その抗体価も拒絶反応のリスクと関連があることが示された。以上から、抗HLA抗体と拒絶反応の関連性が示唆された。本研究は東京大学大学院医学系研究科の倫理委員会の承認を得て、患者に説明を行い臨床研究参加への同意を得て実施された。
|