2011 Fiscal Year Research-status Report
肝硬変患者における脾臓摘出術後門脈血栓症の分子的機序の解明とその臨床応用
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23791546
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金城 直 九州大学, 大学病院, 特任助教 (00507791)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 門脈血栓症 / 肝硬変症 / 脾臓摘出術 / 血栓性素因 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、肝硬変患者に対する脾摘術は、肝癌および肝炎の補助療法として有用な治療法であることを報告してきたが、その合併症の一つに門脈血栓症がある。肝硬変患者における門脈血栓症は、これまでの報告から、0.6%から15%と存在するとされている。また肝硬変患者に対する脾臓摘出術後に認められる門脈血栓症は、比較的高率に起こることが報告されており、それは肝硬変患者の治療の妨げとなるばかりでなく、門脈閉塞や難治性の食道胃静脈瘤形成など新たな問題の引き金となる可能性があり、その病態の解明が必要である。一方、肝硬変患者においては、肝硬変症の進展や脾機能亢進症に伴う血小板減少や肝機能低下に伴う凝固蛋白の合成低下による出血のリスクも存在する。出血と血栓形成といった相反する病態が、肝硬変患者に認められ、それは肝機能低下に伴って凝固蛋白・抗凝固蛋白のいずれも減少し、なんらかのストレス時に不安定となりやすいことが、その原因と考えられている。本研究は、(1)肝硬変患者における、脾臓摘出術というストレスを加えた時の凝固蛋白、抗凝固蛋白の動態を観察し、(2)さらに動物実験モデルを使用した、門脈血栓発症の分子メカニズムを詳細に検討することにより、脾摘術後のみならず肝硬変患者に対しても、より安全で効果的な門脈血栓症治療を行うことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当科にて肝硬変症を有する患者に対して脾臓摘出術を行った19例の術後に血栓を形成した群(n=5)と非形成群(n=14)の2群に分けて、術前の肝機能(アルブミン、ビリルビン、プロトロンビン時間)、肝硬変の線維化のマーカー(IV型コラーゲン、ヒアルロン酸)、血栓性素因(Protein C、Protein S)、遺伝子異常検索(Factor V Leiden、Prothrombin II、MTHFR)、と周術期の凝固・抗凝固蛋白の動態(PT、antithrombinIII、FDP)を比較検討した。(1)術前因子に関しては、肝機能や線維化のマーカーに関しては、血栓形成、非形成群共に有意差を認めなかった。血栓形成群において、antithrombin IIIの有意な低下を認めた。血栓性素因に関しては、いずれも有意差を認めなかった。また摘出脾臓に関しては、血栓形成群は有意に大きかった。(2)周術期の凝固・抗凝固蛋白の動態に関しては、PTは血栓形成群、非形成群共に有意差を認めなかったが、ATIIIは術後7日目に、血栓形成群において明らかな低下を認め(p<0.05)、FDPに関しては術後7日目に、血栓形成群において有意に高値を認めた(p<0.05)。(3)遺伝子異常に関しては、現在研究の準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝硬変患者に対する脾臓摘出術後の門脈血栓症の研究に関しては、症例数がまだ少なく、引き続き下記検討項目に対して、データの集積と解析を進める。(1) 術前 血液凝固検査(PT, APTT, fibrinogen, d-dimer)、血栓性素因となる遺伝子異常の検出(Factor V Leiden、ProthrobinII、MTHFR(ダイレクトシークエンス法))、抗凝固蛋白の活性・発現(Protein C, Protein S, AntithrombinIII)(2) 脾摘術後の止血機構動態に関する検討 脾摘術後の止血機構動態に関して、術後1日目、3日目、7日目、14日目に、血液凝固検査(PT, APTT, FDP, d-dimer)、抗凝固蛋白活性・発現(Protein C, Protein S, AntithrombinIII)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記内容と共に、肝硬変・門脈血栓形成モデルを作成し、脾摘術後門脈血栓症の発症メカニズムに関して、検討を行う。(方法)1)モデルの作成 CCl4肝硬変モデルを作成する。2)脾摘前後の止血機構に関して、脾摘前日、術後1、3、5、7、14日目に、血液凝固検査(PT, APTT, FDP, d-dimer)、抗凝固蛋白活性・発現(Protein C, Protein S, AntithrombinIII)の検討を行う。3)脾摘後に脾静脈を採取し、脾静脈内皮細胞における、凝固促進因子(組織因子、第VIII因子)や凝固抑制因子(ヘパリン様物質、トロンボモジュリン)の発現を免疫組織学的および蛋白定量(Western blotting)にて経時的に検討する。
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Research Products
(5 results)