2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞分離用酵素剤の最適化とイオンチャネル制御の膵島移植への応用
Project/Area Number |
23791554
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
穴澤 貴行 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90566811)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / 細胞・組織 / 糖尿病 |
Research Abstract |
細胞分離から構築された移植片を用いる細胞・組織移植において、高い細胞収量と分離過程の細胞障害回避の両立は重要な課題である。特に膵島移植の分野では、膵島分離過程の特殊性から、収量の不安定性と分離過程で被る顕著な細胞障害が、臨床展開において大きな障害となっている。今後の臨床膵島移植分野で使われるcollagenaseを用い、最も有効なproteaseの種類を明らかにし、その使用すべき最適なcollagenase/neutral protease unitの比を明らかにする。さらにClチャネル阻害による細胞防御原理を応用することにより膵島・外分泌細胞を細胞障害から予防し、機能の良好な膵島を高収率で確保できる分離法を確立し、膵島移植の成績向上を図ることを目的とした。平成23年度はラットを用いた基礎実験を施行した。膵島分離用酵素の最適化については、collagenaseをLiberase MTF(MTF, Roche社)、neutral proteaseをThermolysin (TH, Roche社) もしくはNeutral protease NB(NB, SERVA社)を用いた。結果、通常の組み合わせであるMTF+THより、MTF+NBの組み合わせが良好な結果をもたらしうる可能性が示唆された。Clイオン制御による膵島分離成績への影響と細胞保護効果については、膵島分離過程にClイオン阻害剤(DIDS,NPPB)の添加、Clイオンフリーとした細胞外溶液の使用を導入して、分離成績や細胞のViabilityへの影響を調べ、膵島分離収量やViabilityはClイオンの制御により改善されることが明らかとなった。また、この実験過程で、膵島分離が極めて強い小胞体ストレスをもたらすことが明らかとなり、Clイオン制御が小胞体ストレスへも影響を及ぼしうるかどうかの検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床膵島移植分野で使われるcollagenaseと、有効なproteaseの種類が明らかになりつつある。その使用すべき最適なcollagenase/neutral protease unitの比については、動物種によって異なると考えられるので、臨床へそのまま還元出来る結果であるかどうかは検討が必要と考えられる。Clチャネル阻害による細胞防御原理を応用することにより膵島・外分泌細胞を細胞障害から予防し、機能の良好な膵島を高収率で確保できる分離法は確立しつつある。またその検討過程で、膵島分離が強い小胞体ストレスを及ぼすことが明らかになり、この点については当初の計画以上の成果に繋がる可能性がある。一方、膵島分離環境の違いにより細胞が受ける質的・形態的変化を蛍光色素を用いて連続的、経時的に共晶点レーザー顕微鏡下で観察し、細胞の形態変化に加え、細胞内Clイオン濃度の変化もとらえ、分離酵素の違いが及ぼす細胞内Clイオンへの影響と細胞の形態変化のデータを蓄積するという計画については、未だ質の高いデータを蓄積し得ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
膵島分離が細胞・組織に及ぼす障害においての、小胞体ストレスの関与を追求する。さらにClイオンの制御が、小胞体ストレスの軽減に繋がるかどうかを検討する。その結果、膵島分離法の改善のみならず、Clイオンの細胞保護効果の機序も明らかにしうる可能性を求める。さらに、ラットの基礎実験から得られた知見をもとに、実験群を選択し、ブタを用いた大動物実験を行う。評価項目は平成23年度の結果を参考にし、小動物での知見が大動物へ応用可能かどうかについて検討する。ヒトへの臨床応用に際しては、ヒト膵を用いた有効性の確認が理想的である。最終的には、海外研究機関(共同研究経験のあるミネソタ大学、あるいは共同研究提携を結んでいるマイアミ大学)と共同で、本研究で得られた知見をヒト膵を用いた実験に導入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様、実験動物の購入、および膵島分離用酵素の購入など、実験に必要な物品費に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)