2012 Fiscal Year Annual Research Report
ユーイング肉腫動物モデルの確立と腫瘍発生機構の解析
Project/Area Number |
23791672
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Research Institution | 公益財団法人がん研究会 |
Principal Investigator |
田中 美和 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 研究員 (70345883)
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 動物モデル / ユーイング肉腫 / キメラ遺伝子 / EWS-FLI1 / 発生母地 / エピゲノム / 発がん機構 |
Research Abstract |
染色体転座を伴う骨軟部腫瘍では、プライマリーな異常としてキメラ遺伝子の形成が挙げられる。キメラ遺伝子が腫瘍の増殖や維持に重要であることは示されているが、腫瘍の発生母地やキメラ遺伝子が形成されてから腫瘍がどのような発生過程を辿るかについては未だ不明点が多い。 そこで我々は、肉腫発生の初期から進展に至る過程を、病理組織学的・分子遺伝学的に解析できる新規のex vivo動物モデルを作製を行った。マウス胎仔の間葉系組織からマイクロダイセクションにより集めた細胞に、キメラ遺伝子(EWS-FLI1, EWS-ERG)を導入してヌードマウスへ移植したところ、約8週でヒトユーイング肉腫を模倣する腫瘍を誘導することができた。さらに、Cre-loxPシステムを利用してキメラ遺伝子をノックアウトすると、腫瘍細胞の細胞老化が迅速に誘導されて増殖できないことが示され、腫瘍細胞はキメラ遺伝子依存的に増殖することが明らかとなった。 次いで、ユーイング肉腫マウスモデルの作製に用いた胎仔細胞における遺伝子発現プロファイル解析を行い、腫瘍形成の初期で発現応答する遺伝子に着目し、EWS-FLI1の標的遺伝子を中心にその発現を評価した。その結果、EWS-FLI1の標的遺伝子は、母地細胞におけるヒストンのメチル化状態により、その発現応答が左右され、母地細胞とキメラ遺伝子とのマッチングが腫瘍形成に重要である事が示唆された。 遺伝子発現プロファイル解析で得られた標的遺伝子のうち、特に腫瘍の増殖・維持に重要と予想される遺伝子の発現をsiRNAで抑制したり、標的遺伝子産物を特異的阻害剤で抑制すると、ヒトとマウスのユーイング肉腫細胞の増殖が抑えられることが分かった。これらの結果から、ユーイング肉腫においては、キメラ遺伝子自体を標的とした治療と、プロファイリングから得られた分子標的に対する治療の両者が有効である可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)