2011 Fiscal Year Research-status Report
延髄呼吸リズム形成機構ニューロンへの麻酔関連薬の影響:スライスパッチ法による解析
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23791732
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
桜庭 茂樹 神奈川歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00383729)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オレキシン / 中枢性呼吸調節機構 / 呼吸リズム / 吸入麻酔薬 / 呼吸ニューロン |
Research Abstract |
吸入麻酔薬は延髄腹側部の中枢性呼吸調節機構に作用して呼吸を抑制することがわかっているが、その作用機序は解明されていない。本来から吸入麻酔薬の鎮静作用機序と考えられてきたGABA受容体は吸入麻酔薬の呼吸抑制作用に関与していることが示されきた。しかし、GABA受容体だけでは、吸入麻酔薬の呼吸抑制作用を完全に説明することはできない。本研究では、他の機序として睡眠-覚醒サイクルに関与している覚醒作用を有する神経ペプチドOrexinが吸入麻酔薬の中枢性呼吸調節機構抑制作用にどのように関与しているかを解明する。 新生ラット摘出脳幹脊髄標本を用いて、Orexinの中枢性呼吸調節機構への作用を解析した。Orexinは用量依存性に中枢性呼吸調節機構を刺激し、呼吸数を増加させた。また、その呼吸促進作用が、延髄を介した呼吸数および呼吸出力への作用なのか、脊髄を介する呼吸出力への作用なのかを新生ラット摘出脳幹脊髄分灌流標本を用いて検討し、その作用が延髄の呼吸数への作用であることが解明された。 次に、新生ラット延髄スライス標本を用いて、各種呼吸ニューロン(前吸息性ニューロン、吸息性ニューロン、呼息性ニューロン)へのOrexinの作用を検討した。Orexinは、前吸息性ニューロンおよび吸息性ニューロンを脱分極させ、intraburst frequencyを増加させることで、呼吸数をづかさせていることが明らかになった。 結論として、Orexinは中枢性呼吸調節機構において、前吸息性ニューロンを促進することで呼吸リズム機構にも関与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸入麻酔薬の中枢性呼吸調節機構での呼吸抑制のメカニズムを検討するにあたり、従来は吸入麻酔薬が神経抑制作用がある受容体であるGABA受容体に作用することでの機序が提唱されてきた。しかし、本研究では吸入麻酔薬が神経促進作用がある物質を抑制することで呼吸を抑制するという仮説のもと研究を行なっている。23年度は、その神経促進作用がある神経ペプチドとしてOrexinを候補にした。実際に、Orexinが中枢性呼吸調節機構に作用して、呼吸促進効果があることを明らかにすることができた。 24年度は、同じ実験法を用いて、Orexinと吸入麻酔薬の同時作用を調べる。実験法が確立し、実験で用いる薬品を増やすだけの見込みであるため、期待された結果が得られる可能性が非常に高い。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の本研究結果では、睡眠-覚醒サイクルに関与している覚醒作用を有する神経ペプチドOrexinの中枢性呼吸調節機構での呼吸促進作用を解明することができた。今後の研究の推進としては、吸入麻酔薬セボフルランを呼吸中枢促進作用のあるOrexinが投与された新生ラット延髄スライス標本に投与した時の呼吸ニューロンへの影響を解析する。 実験方法は23年度と全く同じであり、吸入麻酔薬セボフルランをOrexinを同時投与時の中枢性呼吸調節機構への作用の解析をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度と実験方法は同じであり実験機器は揃っている。そのため、次年度は吸入麻酔薬セボフルランを気化し、人工脳脊髄液へ安定して溶解する方法を確立するために、人工脳脊髄液の吸入麻酔薬濃度の測定を外部業者に依頼するさいに研究費を用いる予定である。 他には、薬品、実験動物、人工の脊髄液を作製するための消耗品購入に次年度の研究費を当てる予定である。
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