2011 Fiscal Year Research-status Report
尿路感染症由来緑膿菌臨床株の薬剤耐性機構とその迅速診断法の研究
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23791756
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 穣 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (40533774)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 緑膿菌 / 抗菌薬耐性 / 迅速診断法 |
Research Abstract |
(1)キノロン系抗菌薬は幅広い抗菌スペクトルを有し、優れた抗菌作用を持つ。その機序は細菌のDNA複製に関与するDNAgyraseとIV型topoisomeraseを阻害する事である。この同系薬の耐性機序として、標的酵素の遺伝子変異があげられる。同系薬の標的酵素であるDNAgyraseとIV型topoisomeraseはそれぞれ2つのsub-unit、gyraseA/B、parC/Eから構成されている。本研究ではこれらgyraseA/B、parC/E のキノロン耐性決定領域(Quinolone Resistance-Determining Region: QRDR)でのシークエンスを行い、アミノ酸配列を決定した。さらにwild typeとの比較によりアミノ酸変異を有する株を同定し、アミノ酸配列を決定した。また、その中からアミノ酸変異を有する株を同定し、MICとの関連を検討した。また抗菌薬交差耐性を見るため他系抗菌薬に対するMICも測定し上記の変異との関連を見た。さらに、これら変異の中で有意にMICを動かし得る変異を同定し、この変異を臨床的risk factor(複雑性尿路感染症、性別、フルオロキノロン系などの抗菌薬使用歴など)との相関についても検討した。(2)キノロン系抗菌薬の耐性について、QRDRの段階的変異の蓄積が高度耐性化に関係しているとされている。変異を迅速に診断するため、今回はDenating high performance liquid chromatography法(DHPLC)を行った。これは、変異型DNAを含む場合には、2種のホモ二本鎖分子と2 種のヘテロ二本鎖分子がそれぞれ異なる時間で溶出され、2つ以上のピークを示す事で変異を感知する。一度に比較的広範な領域(数百bp)における既知および未知の変異の有無についてスクリーニングが可能となり、非常に簡便で低コストである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標であった、尿路感染症起因緑膿菌の薬剤耐性化についての、(1)フルオロキノロン系抗菌薬の標的酵素の遺伝子変異の評価、またこれらと抗菌薬耐性および臨床的risk factorとの関連、(2)同系抗菌薬耐性に関する迅速診断方法についての検討がおおむね完遂されたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
緑膿菌におけるefflux pumpの機能亢進について、定量的real-time RT- PCRの手法を用いて、efflux pumpを構成する代表的な蛋白をcodeするRNAの発現頻度の評価を行うことを平成24年度の主目標として考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に使用する設備備品については本施設内に設置されているため、特に経費は要しない。消耗品(RNA抽出、定量的real time RT-PCR用など)については購入の必要があり、とりわけ定量的real time RT-PCRに用いる試薬(プローベなど)に多くの費用を要する。
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