2012 Fiscal Year Research-status Report
妊娠子宮における核カテプシンＬの機能と核移行メカニズムの解析
| Project/Area Number |
23791838
|
|---|
| Research Institution | Osaka University |
|---|
Principal Investigator |
中村 織江 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40399613)
|
|---|
| Keywords | 脱落膜化 / CTLA-2α / カテプシンL / CDP/Cux |
|---|
| Research Abstract |
研究計画に基づいて遂行した研究において、本年度は以下の結果を得た。
１）CTLA-2αおよびCtsLの細胞質－核輸送に関する研究 ・前年度では、プロゲステロン(P4)刺激状態の子宮内膜間質細胞において核膜孔構成分子であるNup62発現が変化することを報告したが、異なる抗体を用いてのさらなる検討で、Nup62のみならずNup153発現がP4刺激により顕著に上昇することを見いだした。これら核膜孔構成分子とCTLA-2αおよびCtsLの細胞質－核輸送の関係を解析するために、P4刺激下の子宮内膜間質細胞においてNup62またはNup153をsiRNAを用いてノックダウンしたところ、核CTLA-2αおよび核CtsLの発現だけではなく細胞全体のCTLA-2αおよびCtsL発現の低下が観察された。特に、発現の低下はP4により直接的な発現制御を受けていると考えられるCTLA-2αで顕著であった。このことは、子宮内膜間質細胞の核膜孔構成分子が転写調節分子としても機能していることを示唆した。
２）核CTLA-2αおよび核CtsLと子宮内膜脱落膜化に関する研究 ・核移行したCtsLは同様に核移行したCTLA-2αと結合し、核内でプロテアーゼ活性を持つことで転写因子CDP/Cuxのショートアイソフォーム生成に関与している。CDP/Cuxのショートアイソフォームは細胞周期G1-S期の短縮に関与していることから、子宮内膜細胞においてサイクリンやその他の細胞周期に関与する分子の発現を解析した。その結果、P4刺激によってG1-S期サイクリンであるE型およびD型サイクリンの発現が増加した。この時、siRNAによってCTLA-2αおよびCtsLをノックダウンするとE型サイクリンのみ発現低下が見られた。このことは、CtsL活性の低下によりCDP/Cuxショートアイソフォームの生成が抑制されたことと相関している。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜間質細胞における、P4刺激およびP4刺激下でCtsL活性を低下させた場合でのサイクリン発現の解析から、CDP/Cuxのショートアイソフォーム生成とサイクリン発現、さらには細胞増殖の加速には正の相関関係があることが強く示唆されたことは、脱落膜化を理解する上では重要である。脱落膜化における細胞増殖に関しては、別の転写因子によるG2-M期短縮に起因した細胞増殖の加速が報告されているが、G1-S期に関する報告はなく、本研究結果は意義深いと考える。
さらに、CTLA-2αおよびCtsLの核内輸送に関して、核膜孔構成分子の変化が輸送ではなくてP4による転写そのものに関与しているかも知れないという知見は当初の予測とは大きく異なるものであったが、近年、核膜孔構成分子がクロマチン構成を変化させて転写調節に関与しているという報告もあるため、非常に興味深い。
|
| Strategy for Future Research Activity |
CTLA-2α結合型CtsLが子宮内膜間質細胞核内で転写因子CDP/Cuxのプロセシングを行うことで、細胞周期に関与する分子の転写を調節し、脱落膜化に伴う細胞増殖を制御していることを、一層明確に示すために、子宮内膜初代培養系および樹立した子宮内膜間質細胞株を用いて、CTLA-2α過剰発現による細胞増殖の変化を解析する。また、サイクリン発現解析だけでなく、細胞周期インヒビターの発現も合わせて解析する。
核膜孔構成分子と脱落膜化の関連性を明確にするために、非妊娠・通常妊娠子宮内膜における核膜孔構成タンパク発現の推移を詳細に解析する。Nup62およびNup153がCTLA-2αおよびCtsLの転写調節に関与しているのかどうかの一つの指標として、EMSAによるDNAとの結合の有無を解析する。
|
| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
請求予定額に準じ、適正な執行を行う。
|
Research Products
(1 results)
