2012 Fiscal Year Research-status Report
新しいヒルシュスプルング病モデルマウスを用いた基礎研究:神経提細胞移植を目指して
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23792033
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田中 奈々 順天堂大学, 医学部, 助教 (50530656)
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Keywords | ヒルシュスプルング病 / 腸管神経系 / 仙骨神経堤細胞 / Sox10 / 器官培養 / 疾患モデルマウス |
Research Abstract |
腸管神経系(ENS)は、胎生期に迷走神経堤由来の神経堤細胞が口側から尾側に向かい増殖しながら遊走し、仙骨神経堤由来の神経堤細胞と消化管尾側末端で統合し形成される。ヒルシュスプルング病(H病)は、無神経節腸管における仙骨神経堤由来の外来神経線維の増生が病理学的特徴であるが、その詳細は未だ明らかでない。本年度は、神経堤細胞の発生に関連する遺伝子Sox10に緑色蛍光タンパクVENUSを標識したトランスジェニックマウス(Sox10-VENUS Tg)を用い、迷走神経堤由来細胞の遊走を外科的に離断することで無神経節腸管を作製した後、組織培養下で直接ENSを観察し外来神経線維が増生するか否かを検討した。 E12.5のSox10-VENUS Tgマウス胎仔を用い、食道~近位結腸を実体顕微鏡下で切除後、組織培養を行い、直腸末端部からの神経堤細胞の動態を正常対象である非切除群と経時的に比較した。非切除群では培養開始2日後から口側へ遊走する仙骨神経堤由来細胞が直腸遠位部でわずかに観察され、3日後に口側から遊走してきた迷走神経堤由来細胞と統合した。切除群では培養開始から2日後、仙骨神経堤由来細胞が口側方向に遊走を開始し、3日後に近位部結腸の切断面まで到達した。 切除群においては非切除群と比較し、多数の伸長した仙骨神経堤細胞からのVENUS陽性線維が観察された。これは本来消化管末端で統合するはずの迷走神経堤由来細胞の遊走が離断された為に仙骨神経堤細胞由来の神経線維が標的を求めて増生した結果と推測され、正常な腸管においてもH病同様の神経線維増生が起こり得る可能性が示唆された。現在この切除群での神経堤細胞の動態機序とH病における外来神経線維増生の機序の関連を明らかにする為の解析を進めている。同時に、神経堤細胞移植や薬剤を用いたH病における再生治療に関する検討も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、ヒルシュスプルング病における腸管神経系の神経線維増生の発生に関する検討を行った。研究の最終的な目的であるヒルシュスプルング病モデルマウスへの細胞移植治療の有効性を検討する為に、ヒルシュスプルング病腸管における神経堤細胞の発生動態を観察する事は必須である。最終年度においては、本研究課題の最終目的である細胞移植治療に関する具体的な検討を行っていく。現状においてはおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は本研究課題の最終目的である細胞移植治療に関する基礎実験の方向性を確立することを目標としていたが、これまでの研究成果は疾患に関する基礎的な発生学的な知見を得ることが主となっている。最終目的のための知見を得るため、これまでの結果をさらに進展させると同時に具体的な検討を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に大幅な変更はない為、次年度においても予定通り動物維持費、試薬の購入等に使用する予定である。
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