2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792072
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松本 剛 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (70600518)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 外傷外科学 |
Research Abstract |
近年、野生のクマが人里に下りてきて人間を襲う被害が増加している。クマによる人身被害症例では、クマの牙または爪による外傷が問題となる。クマによる外傷では、その傷は汚染創であり、十分な洗浄および抗菌薬による感染予防が必要となる。イヌやネコによる外傷に対して使用する抗菌薬についてはコンセンサスが得られているが、クマによる外傷に対する抗菌薬についての報告はない。今回、クマの口腔内常在菌を調べることで、クマによる外傷に対する抗菌薬選択について知見を見出そうとしている。2010年に長野県内で捕獲された野生のツキノワグマの口腔内からスワブを用いてサンプルを採取した。培養により63菌種を分離し凍結保存した。培養分離の結果から大腸菌をはじめとした腸内細菌属、緑膿菌を含むブドウ糖非発酵菌がクマの口腔内が検出された。これはイヌやネコの口腔内常在菌とは異なる傾向をみせている。このことはイヌやネコの外傷に対して使用されている抗菌薬をクマの外傷に対して使用した場合に、十分な感染予防効果が得られない可能性を示唆している。今後、さらにサンプリングを行い、クマの口腔内常在菌の傾向を確認していく予定である。得られた63菌種について、アンピシリン/スルバクタム、クリンダマイシン、シプロフロキサシンに対する感受性の調査を行った。腸内細菌族に対してはどの薬剤もある程度の感受性を示したが、ブドウ糖非発酵菌についてはアンピシリン/スルバクタムおよびクリンダマイシンに対する感受性が悪く、シプロフロキサシンのみが十分な感受性を得られた。このことは今後クマによる外傷に対する抗菌薬選択に参考になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クマの口腔内からのサンプル数を増やす必要があり、現在サンプリングを行う準備をしている。クマの捕獲時期が限られているため、研究の準備が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、ツキノワグマ10頭からの口腔内のサンプリングを終了している。今後さらにサンプル数を増やす必要があるため、2012年夏に長野県内で捕獲されたツキノワグマの口腔内からスワブを用いてサンプリングの追加をする。培養および分離を行いクマの口腔内常在菌の同定を行う。同定された菌について、さらに複数の抗菌薬の感受性を調査する。その結果をもとに、クマによる外傷に対して使用する抗菌薬の適性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況により、2011年度にツキノワグマの口腔内からのサンプリングを行うことができなかった。そのため、サンプリングに必要な購入物品を次年度に購入することとなり、次年度使用額が生じた。ツキノワグマの口腔内からのサンプリングを行い、その培養のために培地を購入する。また、培養した菌の分離および同定を行うための試薬などの購入を行う。分離同定された細菌に対して、さらに複数の感受性試験を行うため、抗菌薬の原沫を購入する。
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Research Products
(1 results)