2012 Fiscal Year Research-status Report
歯科医療環境実態調査に基づく感染予防対策充実に関する研究
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23792518
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
横田 朱理(渡辺朱理) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (80585026)
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Keywords | 歯科医療環境 / デンタルチェアユニット給水系 / 飛散汚染状況 / 意識調査 / バイオフィルム形成 |
Research Abstract |
歯科医療の多くは外科的処置を伴い、歯科医療環境は患者の唾液、血液や病巣切片などが常時周囲にミストとなって飛散している状況である。近年の新型インフルエンザ流行、多剤耐性菌や新型耐性菌による院内感染等を契機に、感染予防対策の整備や充実は急務の課題である。本研究では、歯科医療における感染予防対策を充実させ、歯科医療環境を改善するために、歯科医療環境における細菌汚染状況調査および歯科医療環境の感染予防対策評価指標への実証検討を目的に研究を行った。そこで24年度は、以下のような成果を得て、研究を継続している。 1.23年度の研究成果から、全てのデンタルユニット給水系の配管内からバイオフィルム形成が認められたため、デンタルユニットの配水系ごとの細菌汚染状況調査を実施した。スリーウェイシリンジからの配水系より、洗口部位からの配水系の方により多くの細菌汚染を認め、配水系ごとに除菌を含めて感染予防対策を講じる必要があることがわかった。 2.デンタルユニット周辺の清浄度調査として、歯科医療環境への飛散状況を食品衛生検査指標に記載されているATPふき取り検査を使用して調べた。飛散状況が最も高かったのは、患者の口腔に近いチェア上部であり、次に患者口腔内を照らす照明灯(オペレーティングライト)であった。 3.診療内容ごとのデンタルユニット周辺の飛散状況は、観血処置を行っていたデンタルユニットの清浄度は低く、デンタルユニット周囲には患者の唾液や血液や病巣切片などが飛散している状況が明らかとなった。 4.歯科医療における感染予防対策の徹底と充実につなげるために、広い領域で深く感染予防対策に関わっていく歯科衛生士学生に対して病原微生物や感染予防対策に関する知識や認識度についての意識調査を行った。その結果、やはり感染予防対策にはスタンダードプリコーションの順守が重要だとわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯科医療環境における細菌汚染状況調査では、昨年度からの引き続きであるデンタルチェアユニット給水系の細菌生息状況、そしてデンタルチェアユニット周辺の飛散状況に焦点をあて、研究計画書に示した項目について、研究協力者と協力して概ね進めることができた。デンタルチェアユニット給水系については主に配水系の細菌汚染状況を培養法で調べた。また、デンタルチェアユニット周辺の飛散汚染状況は、ATPふき取り検査を使用し、飛散状況の最も高い場所や各診療内容の飛散状況について実証した。さらに、歯科衛生士学生に対して感染予防対策に関しての意識調査を行い、スタンダードプリコーションの必要性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの成果を基に、デンタルチェアユニット給水系の汚染状況調査およびデンタルチェアユニット周辺の飛散汚染状況から歯科医療環境における感染予防対策評価指標に向けて、更なる検討を行っていく予定である。さらに近年の地球温暖化や毎夏の猛暑などの影響で、発生が懸念されている病害微小昆虫について、まず、タバコシバンムシ(Lasioderma serricirne)の歯科診療室における生息実態調査もあわせて行い、歯科医療における感染予防対策や歯科医療従事者に向けての感染予防対策教育へ繋げていけるように研究を進めていきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は23年度、24年度と同様に、研究費は歯科医療環境における汚染状況調査や清浄度調査を行うため、調査用の一般試薬類、検査キット、プラスチック・ガラス器具類、分子遺伝学実験試薬類などの消耗品に主にあてる予定である。50万円を超えるような備品類の購入の予定はない。また、研究費は研究の成果発表のための学会出張(日本歯科衛生学会 第8回学術大会、神戸国際会議場、平成25年9月14日(土)~16日(月・祝))、また学術雑誌への投稿費用や印刷費などでも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)