2011 Fiscal Year Research-status Report
乳児期に聴覚障碍が疑われた児の親への看護支援に関する研究
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23792652
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藤井 加那子 宮崎大学, 医学部, 助教 (30404403)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 新生児聴覚スクリーニング / 保護者支援 / 早期発見 |
Research Abstract |
1)国内の現状把握;国内の新生児聴覚スクリーニングの実情と、現在の研究動向把握のため文献検討を行った。支援を、その実施時期で3つの期間に分類した。<NHS実施~判定結果の告知>期では、母親の心理状態を考慮した検査説明や結果告知の必要性が訴えられていた。また、検査後の精神的支援を求める声があげられていた。しかし、この時期の支援の現状や実践、養育者の心理状態に焦点をあてた研究はなかった。<refer判定・精密検査から確定診断>期では、保健師による家庭訪問等で養育者の不安に対する支援が行われていることが報告されていた。これらの支援はrefer判定後に行われるものもあれば、精密検査機関受診後に訪問が行われており、地域による違いが見られた。保健師の訪問に対する養育者のニーズや、医療機関等で行われている支援について述べた文献はなかった。<療育開始>期では、主に聾学校の乳幼児教育相談で養育者の心理的支援、障がい理解や療育に関する相談、聴覚補償に関する専門的知識の提供が行われていた。また、自治体によっては補聴器購入助成事業も行われていた。精密検査や確定診断後は養育者に対する支援は療育から様々な形で行われていることが明らかとなった。しかしNHS実施後から確定診断までにおける支援の実態は明らかにされていないことが判明した。今後はNHS実施時から確定診断までの期間における養育者の支援に対するニーズや具体的支援の実態を明らかにし、求められる支援を検討していく必要がある。2)医療・療育の連携、保護者の意見把握:聴覚支援学校の乳幼児相談で研修を実施し、訪れている保護者との意見交換を行った。聾学校の乳幼児相談と繋がるまで、子育てや子どもの将来のことで泣き暮らした、病院から学校の紹介がない、障がいの知識がないため、何が正しいのか分からなかったなど、多くの支援を求めていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新生児聴覚スクリーニングが始まり約10年経つが、これまでの研究は医学的見地からのスクリーニング評価が中心となっていた現状が文献検討より明らかになった。また、スクリーニングに携わる医療職・教育職どちらもが、現状のシステムの問題について共通した認識をもっており、システムの成熟化に向けて取り組んでいこうとしていることも明らかとなった。しかし、スクリーニングシステムの地域格差やシステムの成熟化を検討し、子どもの成長や家族の支援を縦断的に考えていながらも、スクリーニング直後の支援については、スクリーニングの導入が速かった地域でも、ほとんど考えられていない現状も明らかとなった。この検討により、研究者が実態を調査する上で貴重な示唆を得ることが出来たと考える。また、聴覚障碍児の保護者との意見交換をしたことも大きな意味があったと考える。新たな知見を得たことから、実態調査の内容、規模など研究計画の見直しをすることができたことは大いに有意義であった。調査内容の見直しが生じ、研究計画の見直しが行われたため、当初の予定通りには進んでいないが、概ね順調に進んでいると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.実態調査NHSや聴覚障碍の確定診断・治療を行っている医療機関の看護師を対象に,「乳児期における聴覚障碍精密検査時の支援」に関する質問紙調査を行い,聴覚障碍児とその家族に対して看護職による援助がどのように行われているかを明らかにする。2.面接調査 実態調査で明らかにされた支援状況を踏まえた上で,聴覚障碍児の家族がRefer-確定診断に至るまでの期間に看護職から受けた支援と望む支援をインタビュー調査から明らかにしていく。インタビュー内容については質的帰納的に分析し,聴覚障碍児の家族がReferから診断告知時にどのような体験をし,看護師はどのように援助を行っていたのか,行われた援助は母親にどのように影響していたのかを明らかにする。この分析結果により,聴覚障碍児の家族に必要な看護援助を検討していく。3.結果をまとめ,NHS後の援助の実態を報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査研究用質問紙作成に関わる費用として(1)文献購入費(2)質問紙用文具購入費(3)質問紙配布および回収用郵送費(4)データ整理等の研究補助者雇用費等を予定している。面接調査においては(1)テープ起こし等の研究補助者雇用費等を予定している。また、文献検討による国内現状を学会で報告するため、学会参加費としての使用を予定している。
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