2011 Fiscal Year Annual Research Report
過疎・高齢化災害被災地の医療・福祉保障制度のあり方に関する研究
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23810012
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
井口 克郎 三重大学, 人文学部, 研究員 (10572480)
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Keywords | 災害 / 過疎・高齢化 / 医療・福祉 / 社会保障 / 人権 |
Research Abstract |
初年度は、東日本大震災被災地でどのような医療・福祉・生活問題が起きているかを把握するための現地調査活動と、過疎・高齢化災害被災地における住民の生活保障を実現するための、医療保障に関する政策的・原理的考察を行った。 この間、具体的に訪問した被災地は、岩手県陸前高田市、宮城県南三陸町、気仙沼市、石巻市、福島県いわき市などである。現地で、災害復興や住民の医療・福祉(ケア)および見守りに関係する行政機関、NPO、被災者などから被災時の状況や現状に関するヒアリング等を行うことができた。 また、今後、東海・東南海・南海地震による被害が想定されている三重県内においても、防災としての医療・福祉、社会保障制度という視点から、地域福祉体制の現状把握に関する調査を行っている。 以上、現段階で得られた知見から、今後、東海・東南海・南海地震による被害が想定されている三重県において、医療・福祉の視点から防災・地域づくりを考える専門職および市民向けのシンポジウムも開催し、情報発信に努めた(「第8回三重県福祉セミナー」)。 また、当初は予定していなかったが、医療・防災体制の面で世界的に高い評価を受けているキューバ共和国を訪問し、現地の医療・防災体制に関する取り組みの調査を行うことができた。そこから、東日本大震災被災地の復興や、今後起こりうる首都直下型地震、東海・東南海・南海地震の防災を考えるにあたり示唆を得ることができた。 東日本大震災被災地における現地調査では、過去の災害被災地の教訓が生かしきれていない。孤独死や孤立、住みなれた地域からの排除、生活保障制度が不十分なことによる生活困難、住民間の分断などといった過去と同じような悲劇が起きている、または起こりつつある様子が確認できた。それらを解決する方策を検討し、今後起こりうる大災害の現場で悲劇を二度と繰り返さないためにも本研究の意義は高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査による実態把握作業については、刻一刻と変化する現地の状況を把握するため、当初予定していたよりも多くの場所を訪問し、現場の生々しい実態や課題を把握することができた。現地調査による実態把握の面では予想以上の成果を上げることができた。ただ、その作業に予算の多くを費やしたため、文献購入に思うように予算を回すことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も現地訪問を重ねながら、被災地の状況変化を追跡しつつ分析し、健康保障、居住保障に関する制度・政策分析や原理的考察等も加えながら、最終的に政策提言につなげていく。これまで、東北被災地現地訪問を重ねる中で、現地被災者・支援者との関係が構築されてきた。その関係の中で、今後も現地の状況分析に力を入れる。三重県でも、地元住民組織等の協力を得ながら、地域の医療・福祉体制の把握を進めていく予定である。
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Research Products
(7 results)