2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23820011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
劉 文兵 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 学術研究員 (70609958)
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Keywords | 日中映画交流 / 日本のイメージ / 中国のイメージ / 日中戦争 / 満州映画協会 / 李香蘭 / 日中合作映画 / 〓小平時代 |
Research Abstract |
日中関係が蜜月期にあった1980年代に、日本映画の影響下で再出発することとなった文化大革命以後の中国映画をクローズアップした学術本『スクリーンに見る現代中国の原点-〓小平時代の集団的身体と記憶』(20万字)は2012年3月に脱稿した。「文化大革命」(1966~76年)という大きなトラウマを抱えた中国社会が、「天安門事件」(1989年)という新たな歴史的な出来事を遭遇したのち、〓小平「南巡講話」(1992年)をうけて高度経済成長期に突入していくという過程において、改革開放路線をいかに確立していったかというプロセスを浮き彫りにするとともに、それと通底する今日の中国社会の複雑な心理構造や、イデオロギー的な位相を解明することを試みた。日本映画の戦後黄金期(1950~58年)との類似性や、日本映画の影響についても随所言及している。斬新な視点を提示した画期的な中国映画論、日中比較文化論。 2011年9月21日から23日にかけて、松本清張記念館を訪ね、松本清張の中国訪問(1983年)と、清張作品『密教の水源をみる空海・中国・インド』を巡ってリサーチをおこなった上、中国清華大学王成教授と「中国における映画『砂の器』の影響」をテーマに対談し、対談の記録が『松本清張研究第13号』(2012年3月)に掲載された。 木下恵介監督が手掛けた国民的な映画『二十四の瞳』(1954年)における日本人の自己イメージと、監督自身の中国戦線への出征体験との関係について論考を執筆した。 李香蘭(山口淑子・大鷹淑子)を切り口に、満州映画研究に新しい光を与えようと思い、関係者へのインタビューや資料収集をおこなった。研究成果の一部を、2012年3月3日に開催された日本植民地研究会2011年度春季研究会において口頭発表をおこなった。 さらに、文革以降の中国への日本映画輸出に携わった古賀正喜氏(松竹映像ライツ部)や、初の日中合作テレビドラマ『望郷之星長谷川テルの青春』(1980年)を手掛けた福本義人監督、プロデューサーの中山和記氏に取材した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
文革以降の中国への日本映画輸出のルードを解明すべく、関係者へのインタビューをおこなったばかりでなく、日中映画交流のみならず、テレビドラマにおける日中の交流という新しい視点を取り入れ、インタビューや作品分析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
木下恵介とr二十四の瞳』については、松竹「木下恵介生誕100年プログラム」と連動しながら、研究成果を発表していき、、李香蘭や満州映画については2012年7月開催される日本植民地研究会年次大会において、文革以降の日中映画交流については2012年6月に現代中国学会主催のシンポジウム「日中国交正常化40週年」において、口頭発表をおこなう。さらに、研究計画通りに、23年度におこなったリサーチやインタビューの成果を踏まえながら、学術論文を執筆。
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Research Products
(6 results)