2011 Fiscal Year Annual Research Report
「自治」の作法:スロヴァキアにおける村落アソシエーションとNGOの交渉より
Project/Area Number |
23820043
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
神原 ゆうこ 北九州市立大学, 基盤教育センター, 講師 (50611068)
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Keywords | 文化人類学 / 自治 / 公共性 / ポスト社会主義 / 地域社会 |
Research Abstract |
本研究では、1989年の体制転換、2004年のEU加盟を経たスロヴァキア共和国に注目し、村落地域であっても、政治的方針の変容に地域社会が直面せざるを得ない現場における公共性のありかたを明らかにすることを目的としている。具体的には、スロヴァキアの地域社会における「自治」の場にかかわるアソシエーションやNGOの連携のありかた、および「自治」について異なる論理の交渉や接合に注目する。 上記の研究課題を遂行するため、本年度は、分析を行う上で鍵となる概念の考察と現地調査を行った。前者に関しては、まず現地の村落社会における民主主義理解に関する考察を試み、その結果を学会などで報告した。また、調査にあたっては現地の研究者との議論も欠かせないため、現地スロヴァキア近年の文化人類学動向を把握することに努め、こちらは書評として発表した。後者の現地調査については、スロヴァキアの研究者や関係機関に協力を仰ぎ、具体的には次の3点の作業に専念した((1)スロヴァキア共和国における、図書館や関係機関での文献、その他の資料取集、(2)首都ブラチスラヴァ周辺村落における村落アソシエーション関係者へのインタビュー調査、(3)来年度の2次調査の準備のため、都市部のアソシエーションについての最新の現地情報収集し、現地の研究者などの協力者との打ち合わせ)。 自治という言葉は、文化人類学になじみにくい概念のように見えるが、このようなアソシエーションの関与に焦点を絞ったミクロレベルの「自治」は、異なる思想を持つ人々の合意形成の過程そのものであり、現地における公共性を考察する補助線となるものである。顔のみえる関係のなかの村落のアソシエーションと一見スマートではあるが、浮き沈みの激しい都市のアソシエーションを二項対立的に分析するのではなく、そこにある「自治」に関する価値観の違いについて考察を進めることに、本研究は当該分野における意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スロヴァキアのNGOの状況は当初の想定以上に刻々と変化しており、文書資料等から選出した活発に活動を行っていたはずのNGOが、調査時点では活動休止状態になっていたケースに多数遭遇した。そこで今年度の調査では、現在のスロヴァキアでの活発に活動を行っているNGO関係者について、首都ブラチスラヴァ大学関係者のほか、スロヴァキア周辺都市(ニトラ、セニツァ)の大学関係者や学芸員やUNDPのスロヴァキア担当職員から情報を得ることに努め、次年度の調査への準備に励んだ。同時にこのようなNGOの盛衰がスロヴァキアの自治の現場に与える影響について考察を深めることができたので、評価を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、昨年度のフィールドワークの成果をもとに、スロヴァキアにおける村落および地方中小都市でのフィールドワークを継続する。当初の研究計画では、本年度はインタビューおよび参与観察する対象のNGOを絞る予定であったが、昨年度の調査において多数のNGOの情報を得ることができたため、すぐには絞り込まず、一度は彼/女らの活動についてのインタビューを行ってから、絞り込みを行う予定である。西スロヴァキア地域で様々な地域活動を行う複数のNGOにインタビューを行うことで、当初計画していた中部スロヴァキアとの比較調査を行う必要がなくなり、西スロヴァキアに焦点をあてた調査を進める予定である。
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Research Products
(4 results)