2011 Fiscal Year Annual Research Report
人間・動物関係論の再構築-70年代以降の倫理学的動物論と哲学的動物論の影響関係
Project/Area Number |
23820052
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浜野 喬士 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (20608434)
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Keywords | 西洋哲学 / 西洋倫理学 / 哲学原論・各論 / 倫理学原論・各論 / 社会思想史 / 比較思想史 / 比較文学 / 比較哲学 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、第一に、従来分離して研究されてきた倫理学的動物論と哲学的動物論を統合的に考察しつつ、1970年代以降の両者の相互影響関係を明らかにすること、第二に「人間・動物関係論」という新しい学問領域を構築することである。以下本年度の研究成果について具体的に報告する。 (1)1970年代以降のベジタリアニズムの問題:1970年代はゴドロヴィッチ/ハリス『動物・人間・道徳』(1971年)やシンガー『動物の解放』(1975年)に代表されるように、動物思想史上、大きな転回となった時期である。この時期、ベジタリアニズムは倫理学的動物論と哲学的動物論が鋭く交錯する思想的概念として重要度を増した。論文「肉食忌避・ベジタリアニズム・動物:倫理学的動物論と人間・動物関係論」では、ステファン・R・L・クラークの70年代の著作『動物の道徳的地位』(1977年)における、動物肉の人肉による代替というカニバリズム的思考実験を検討の端緒に置き、ベジタリアニズム概念の意義を論じた。その際2000年代のコーラ・ダイヤモンドによる倫理学的動物論批判についても見た。さらに、これらのベジタリアニズムをめぐる哲学的対立を、ヘシオドス、プルタルコス、ルソー、シェリーなどのベジタリアニズム思想史上重要な古典を援用しつつ再検討した。 これらの作業は1970年代以降、今日に至るまでの動物論の発展史を、さらに遡る時代の思想史的遺産を念頭に入れつつ再構成していく上で、重要な意義を持つ。 (2)1970年代以降、思想問題化した捕鯨論の歴史的背景の検討:70年代以降、急速に国際問題化した捕鯨論の背景に存在している思想史動向について、倫理学的・哲学的動物論の観点から、論文「なぜ捕鯨だけが攻撃されるか」において分析を加えた。この作業は「人間・動物関係論」をめぐるアカデミズムの現状を提示するという重要な意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の計画に沿う形で、二つの論文、(「肉食忌避・ベジタリアニズム・動物:倫理学的動物論と人間・動物関係論」「なぜ捕鯨だけが攻撃されるか」)を発表した。人間・動物関係論のアウトライン構築作業は計画通り進んでいる。倫理学的動物論、哲学的動物論の双方について、文献の収集・整理作業は、英語圏・仏語圏・独語圏のそれぞれにおいて順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
倫理学的動物論の初期資料について、収集が充分でない点が存在するので、図書館ILLサービスや、電子アーカイヴなどのサービスを活用しつつ、補完に努める。また人間・動物関係論関連文献目録についてウェブ上で情報提供をするための準備も進める。
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Research Products
(2 results)