2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際舞台における日本人のイメージの形成 ―マダム花子の残像―
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23820081
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
根岸 理子 国文学研究資料館, 学術企画連携部, 機関研究員 (80322436)
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Keywords | 比較演劇学 / 芸術諸学 / インターカルチャリズム / ジャポニスム / オリエンタリズム |
Research Abstract |
「マダム花子(1868-1945)」と称され、20世紀初頭、20年近くに渡って欧米で興行し、彫刻家ロダンのモデルともなった日本女優の活動を調査することにより、日本人が海外でどのようなイメージを作り上げてきたのか明らかにすることを目的とする研究である。花子は、ヨーロッパ18ヵ国とアメリカを巡演して廻っている。研究代表者が既に調査していたイギリスと、比較的他の(美術)研究者によって調べられているフランスを除いた国を訪れることにし、2011年の10月16日から24日まで、北欧のスウェーデン王立図書館およびヘルシンキ演劇博物館において調査を行ない、写真入りの記事や図版入りの劇評および公演ポスターやプログラム等を収集することができた。また、1906年2月に花子が公演をおこなった劇場(Dramatiska Teaternドラマティスカ劇場)や1912年1月に公演した劇場(Alexander Theatreアレクサンダー劇場)の写真を撮ることができた。翌2012年1月2日から11日まではアメリカ議会図書館およびニューヨーク公共図書館を訪れ、花子一座による1907年のアメリカ公演についてAtranta Journal、The Des Moines Registerなどに掲載された記事や劇評、公演広告などを収集することができた。また、花子一座をニューヨークに招聘したアメリカの俳優アーノルド・デイリー(Arnold Daly)に関する情報(公演プログラムや劇評、プロフィール等)も入手することができた。こうした現地調査によって新たな資料を得ることができた意義は非常に大きい。これまで、その必要性が指摘されながらも着手されることのなかった調査なので、こうして得られた資料を分析し公開することは、日本だけでなく海外の日本学者(Japonologist)にとっても大いに益となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6ヵ月という期間で当初の目的であった北欧2ヵ国(スウェーデンおよびフィンランド)の2都市(ストックホルムおよびヘルシンキ)と米国2都市(ワシシトンDCおよびニューヨーク)における調査を行ない、貴重な資料を入手することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の経験を生かし、比較的調査を行ないやすく、確実に何らかの資料が入手できると思われる国・都市においての調査を優先する。まず、マダム花子の一座が1911年・1913年と二度に渡って大規模なツアーを行なったイタリアでの調査を敢行する予定である。海外において短期の滞在で効率よく資料を探すためには現地の方々の助力が不可欠であるため、イタリアに縁故のある研究者に現地の研究者を紹介してもらい、協力していただきながら調査をすすめることとする。本年が最終年度であるので、調査結果は前年度のものと合わせて研究代表者が所属している学会や研究会において発表し、当研究の締め括りをする予定である。
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